※当記事はqBiz 西日本新聞経済電子版の提供記事です
地元に住み地元ネタで
春まだ浅い3月。福岡市の繁華街、天神と中洲の間を流れる那珂川に架かる「福博であい橋」の川岸に、一隻の船が停泊している。岸を発着点に川を周遊する水上観光バス「那珂川リバークルーズ」。船上で、福岡吉本のピン芸人、マサル(29)は、報道陣に囲まれていた。マサルが「一日お笑い船長」を務め、観光客を案内する企画のお披露目会なのだ。先輩漫才コンビ「ぶんぶん丸」=山田直樹(34)と池田義之(32)=も乗船していた。
建設現場の作業員を思わせるヘルメット姿で現れ、船頭に立ったマサル。船が岸を離れると、キャナルシティ博多や中洲のビル街を見渡す船上からの眺めを博多弁で案内し、早速、持ちネタを披露した。
「博多のおいさんは話が大きくなる。魚釣りの話でも、釣れた魚の大きさは最初こんくらい(両手で示す大きさは約20センチ)やったとに、そのうち『こげん太かった(大きかった)』と両手ば広げて(1メートル以上)言う」
「博多のおいさんの会話。おっとっととっとってていうとったとに、なんでおっとっととっとってくれんやったと」(「おっとっと」(スナック菓子)を(全部食べず)残しておいてほしいと言ったのに、なぜ「おっとっと」を残してくれなかったの)
「よそから来た人、分からんやろね」――。今も続ける解体作業のアルバイトをヒントにした物まね芸「博多のおいさん」シリーズは、報道陣の笑いを誘った。
マサルは生まれも育ちも博多。ぶんぶん丸の2人も福岡県粕屋郡の出身だ。実はこの日、マサルは先輩コンビに続いて「福岡県住みます芸人」に就任した。これは吉本興業の大崎洋社長の発案で2011年に始まった「あなたの街に住みますプロジェクト」の一環。47都道府県に地元出身芸人を住まわせ、笑いの力で地域活性化を後押ししている。約7000人に上る全国の吉本芸人を「笑いのインフラ」として生かすのが狙いで、吉本興業流の「地方創生」戦略なのだ。