6月24日、有名ブロガーで、オンラインメディア編集長の岡本顕一郎さんが福岡市で刺殺された。殺人などの疑いで逮捕された男は、犯行の動機について「ネット上のやりとりで恨みをもっていた」などと話しているという。報道ベンチャー「JX通信社」の米重克洋社長は「今回の事件は『個人の発信者』を対象にした言論テロだ。ブロガーなどが脅威を感じるのは当然だが、事件で萎縮することなく書き続けることが重要だ」と訴える――。
事件の舞台になったFukuoka Growth Next(写真=プレジデントオンライン編集部 2017年6月撮影)

イベント直後に起こった事件

著名ブロガー「Hagex」として活躍していたオンラインメディア編集長の岡本顕一郎さんが、福岡市内のイベントに出た後、男に刺殺された。この事件が今、大きな波紋を広げている。

朝日新聞などによると、Hagexさんは6月24日、福岡市内でネット上の炎上やトラブルやその対処法をテーマにしたイベントを開催。そしてイベント終了後、会場のトイレで犯人にナイフを刺され、その後病院で死亡した。犯人は現場から逃走したが、その後に交番に出頭し、逮捕された。

時事通信によると岡本さんと犯人は面識がなかったという。だが以前、岡本さんが犯人について「匿名で誹謗中傷を繰り返している人物」だとブログで指摘したことから、岡本さんに恨みを持っていたという。

岡本さんのブログは、インターネット掲示板に投稿された面白い書き込みを紹介するかたわら、ネット上の著名人の言動について、その矛盾やおかしさを厳しく指摘する書きぶりで有名だった。

そうした記事はたびたびネット上で大きく拡散しており、その発信力が契機となって著書『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』(アスキー新書)を出版するなど話題に事欠かなかった。岡本さんはネット上では「Hagex」と名乗り、本名を明かしていなかったが、今回の事件が報道されたことで、セキュリティ業界で有名な編集者だったことが明らかになった。

ブロガーとして大きな知名度のある人物が被害者であっただけに、今回の事件は多くの読者やブロガーらに驚きと恐怖を伴って広がっている。

言論に対するテロ、「個人の発信者」がターゲットに

ネットの普及は、これまで発信力を独占してきたマスメディア以外の大勢の個人に発信の機会を与えた。一方で、そうした個人の発信者は機会と同時にリスクを負うことになった。

具体的には、発信や言論の内容に起因するレピュテーション(風評)リスク、批評の対象となった人からの怨恨、あるいは私生活でのプライバシー暴露などだ。