次に朝日社説は「自民党は公約に、自衛隊の明記▽教育の無償化・充実強化▽緊急事態対応▽参議院の合区解消の4項目を記した」と書いた後、安倍晋三首相の選挙戦略を分析してく。
安倍首相の手の内を推測する朝日社説
「首相は、街頭演説では改憲を口にしない。訴えるのはもっぱら北朝鮮情勢やアベノミクスの『成果』」である。首相はこれまでの選挙でも経済を前面に掲げ、そこで得た数の力で、選挙戦で強く訴えなかった特定秘密保護法や安全保障関連法、『共謀罪』法など民意を二分する政策を進めてきた」
こう解説した後、「同じ手法で首相が次に狙うのは9条改正だろう」と指摘する。説得力のある指摘である。
朝日社説はその中盤で自らの憲法観をこうまとめている。
「憲法は国家権力の行使を規制し、国民の人権を保障するための規範だ。だからこそ、その改正には普通の法律以上に厳しい手続きが定められている。他の措置ではどうしても対処できない現実があって初めて、改正すべきものだ」
自衛隊については「安倍内閣を含む歴代内閣が『合憲』と位置づけてきた」と指摘し、他の改憲項目にも「教育無償化も、予算措置や立法で対応可能だろう。自民党の公約に並ぶ4項目には、改憲しないと対応できないものは見当たらない」と書き、護憲派の意地を見せる。
「安倍首相の個人の情念」という分析
今回の朝日社説の中で特に興味深いのは、安倍首相が改憲にこだわるその理由を思い切って推測した部分である。
「安倍首相は、なぜ改憲にこだわるのか。首相はかつて憲法を『みっともない』と表現した。背景には占領期に米国に押しつけられたとの歴史観がある。「われわれの手で新しい憲法をつくっていこう」という精神こそが新しい時代を切り開いていく、と述べたこともある。そこには必要性や優先順位の議論はない。首相個人の情念に由来する改憲論だろう。憲法を軽んじる首相のふるまいは、そうした持論の反映のように見える」
なるほど。護憲派の朝日新聞らしい主張ではあるが、「中道」を自称するこの沙鴎一歩にも、うなずけるところは多い。とりわけ「安倍首相個人の情念」という分析は、全くその通りだと思う。
朝日社説は最後に「憲法改正は権力の強化が目的であってはならない」と訴えるが、これもよく分かる。やはり「国民主権」「人権の尊重」「民主主義」の大原則を忘れずに憲法論議を進めることこそ、大切なのである。