中国への「配慮」を続ける日本

中国海軍が日本海で行動する目的については、シーレーンとしての日本海に関心を寄せているという見解があるが、後に述べるように尖閣諸島などの南西諸島を占領する際に自衛隊の戦力を分散する目的もある。

H-6爆撃機は海軍と空軍が保有しているが、今回、紀伊半島沖を飛行したのは、空軍報道官が声明を発表していることから空軍所属ということになる。

H-6爆撃機は対艦ミサイルと対地攻撃用の巡航ミサイルを搭載可能だ。とはいえ、空軍所属のH-6爆撃機の任務は対地攻撃である。そのため、日本本土へ接近する空軍所属のH-6爆撃機は日本本土の攻撃を目的としているといえる。

今回飛来したH-6K爆撃機は、射程距離1500~2000kmの核弾頭を搭載可能な対地巡航ミサイル(CJ-10K)を6発搭載可能であることと、東京方面に向かって飛行していることから、紀伊半島沖で東京方面へ向けてCJ-10Kを発射後、反転するというシナリオだった可能性が高い。

中国はすでに日本を射程距離に収める中距離弾道ミサイルを配備しているが、それだけでなく、爆撃機により東京を攻撃する意思と能力があることを、今回の飛行により明確に示したことになる。

国際法には違反していないが…

今回の爆撃機の飛行は、領空侵犯しているわけではないため、国際法には違反していない。しかし、隣国の首都へ向けて6機もの爆撃機を飛行させるという行為は、「友好国」が行うことではない。

北朝鮮の弾道ミサイル発射などの際と同様に、官房長官や防衛大臣は「情報の収集と分析に努める」とはいうものの、「防衛白書」以外で分析結果が正式に公表されたことはほとんどない。今回のH-6爆撃機の飛行についても、分析結果が公表されることはないだろう。

分析結果を公表しないことで日本の世論や中国を刺激しない、といった中国への過剰な「配慮」をしているうちに、東シナ海は中国軍の強い影響下に置かれ、沖縄本島・宮古島間の公海を中国軍機や海軍艦艇が通過するのも当たり前となってしまった。

外交と軍事は密接な関係にあることから、空軍所属の爆撃機が太平洋側から本州に接近したという事実は、中国の対日政策がより強硬になったことを意味するとともに、中国が「友好国」ではないことをあらためて浮き彫りにした。