計画通り進行する中国の海洋戦略

今回の爆撃機の飛行目的をより深く探るためには、中国の海洋戦略について理解しておく必要がある。

現在、中国の海洋戦略の柱となっているのは、「接近阻止」「領域拒否」(Anti-Access/Area Denial, A2/AD)というものである。

「接近阻止」とは、九州を起点に、日本の南西諸島、フィリピンを結ぶラインを「第一列島線」とし、そこから中国側の海域(黄海、東シナ海、南シナ海)への米軍の接近を阻止する戦略である。

また、「第二列島線」として、伊豆諸島、小笠原諸島、グァム、サイパン、ニューギニア島を結ぶラインを設定している。この「第一列島線」と「第二列島線」の間の「領域」で、米軍の自由な海洋の使用および作戦行動を拒否する。これが「領域拒否」である。

こうした戦略を実現するために、中国は海軍力の建設を計画的に推し進めている。以下は、鄧小平主席の意向に沿って1982年に劉華清副主席が策定した海軍建設の方針である。

再建期(1982~2000年):中国沿岸海域の完全な防備態勢を整備。
躍進前期(2000~2010年):第一列島線内部の制海権確保。
躍進後期(2010~2020年):第二列島線内部の制海権確保。空母建造。
完成期(2020~2040年):米海軍による太平洋、インド洋の独占的支配を阻止。
2040年:米海軍と対等な海軍建設。

この計画は時代の変化を受けて度々見直されてきたが、基本的な枠組みは今なお引き継がれている。現在は「躍進後期」となるが、今年4月の2隻目の空母の進水は、この方針に基づいたものといえる。

東京を攻撃する目的とは

例えば、中国軍が宮古島を占領したとしよう。当然のことながら宮古島を奪還するために、陸海空自衛隊の戦力が宮古島周辺に集中する。しかし、こうなると中国軍は宮古島周辺の海域と空域の優越性、すなわち、制海権と制空権を確保することが難しくなる。

制海権と制空権が確保できなくなると、中国本土から宮古島への武器、弾薬、燃料などの補給物資の輸送が行えなくなるため、長期にわたる占領が難しくなる。

こうした事態を避けるために、中国は北海道や本州への弾道ミサイルや爆撃機による攻撃の可能性をちらつかせて、宮古島周辺に自衛隊の戦力が集中しないようにする。