【田原】いずれにしても問題ですね。

【合田】はい。もし働いている人が抜いているのだとしても、私たちは外国から来てビジネスをやっている立場。監視カメラをつけて見張ることは村の人たちとの関係を考えるとやりたくない。そこで思いついたのが電子マネーの導入です。最初から現金を触らないオペレーションにしたら抜かれる心配もないし、お釣りを計算する必要もないから計算間違いも起きません。

【田原】僕は電子マネーを使わないのでよくわからない。具体的にどういうものですか。

【合田】最初にお金をデポジットして、その額がカードに記録されて、買い物するとき決済端末にカードをピタッと当てて精算をします。

【田原】クレジットカードは後払いですよね。電子マネーは最初にカードにお金を入れる?

【合田】現金を持ってきてくれればチャージができます。また、私たちは農民からヤトロファや米、豆といった農作物を買い取っていて、その支払いも電子マネー。最初から収入が電子マネーだと、チャージの必要もありません。

【田原】電子マネーを導入してどうなりました?

【合田】ひと家族がキオスクで使う額は、月平均5000~6000円です。買い物するなら、それだけの額がチャージされていれば十分。ところが、カードが普及するにつれて30万~40万円をチャージする人が現れ始めました。どうして使い切れないお金をカードに入れるのか。理由を聞いてみると、「現金を保管しておくより安全」と教えてくれました。つまり電子マネーのカードを銀行の金庫代わりにするという予想外の用途が出てきたのです。

電気のない村では銀行はできない

【田原】モザンビークに銀行はない?

【合田】農村部にはないです。考えてみれば当たり前ですが、電気のないところではパソコンが使えず、銀行の支店も開きようがありませんから。

【田原】農民はいわゆるタンス預金?

【合田】農民は収穫期の1~2カ月間に農作物を売った現金で1年の生活をまかないます。そのお金は穴を掘って埋めるなど隠して保管しますが、雨が降って流されたり、誰かに見つかって盗まれてしまうことも珍しくないそうです。紙幣をシロアリに食われてボロボロになったという話も聞きました。

【田原】なるほど。困っていたところに電子マネーが役立ったわけか。

【合田】はい。このような使い方をされているなら、いっそのこと私たちが銀行の機能を提供すればいいと考えて、いま取り組んでいます。