【田原】銀行をやるなら普通は国の許認可が必要です。モザンビークもそうですか。

【合田】はい、中央銀行からのライセンスが必要です。ライセンスによってできることに制限がついていて、電子マネーのプロジェクトは特定のエリアで限定的な業務を行えるライセンスを3年前に取っています。ただ、その免許ではやれることが限られるので、これから広げていきます。

【田原】銀行をやってお金を預かると、農民の暮らしはどう変わりますか?

【合田】個人レベルでは計画的に使うように意識が変わってくると思います。ただ、それ以上に期待しているのはコミュニティの変化。私たちが新しい銀行をやることで、農村のあり方自体を変えられるんじゃないかと目論んでいます。

【田原】どういうこと?

【合田】日本の農村だと、灌漑のため池をつくったり、近隣の共同体みんなで協力して運営することがありますよね。ところが、モザンビークの農村部にはため池のような共同インフラがほとんどありません。なぜなら、モザンビークは社会主義国として独立して、森林部で生活していた人々を幹線道路沿いに移住させて村を人工的につくったから。いろんなところから集められたので、内戦時にゲリラ側と政府側だった人が混在。殺人や強盗も多く、朝起きたら隣人が木に吊るされておなかを裂かれていたという事件も起きていたそうです。そのようなコミュニティなので住民同士のつながりは弱く、共同インフラをつくる発想もない。

【田原】それは大変だ。でも、銀行とコミュニティがどう関係するのかな。

【合田】私たちがやろうとしている銀行は、預かり金に金利をつけずに配当で還元します。配当は、個人口座ではなく、村ごとの共同管理口座に入れる。たとえば1人100円の配当を村民700人に配っても一人一人がコーラ1本飲んで終わりですが、700人の共同管理口座に7万円入れれば村のインフラづくりに活用できます。その仕組みをつくりたくて。