金利をつけない大きな目的

【田原】個人ではなく共同体に還元して、合田さんの銀行のメリットは?

【合田】私たちの銀行の収益は送金や引き出しの手数料。村が豊かになって生産性が上がれば取扱量も増えて、私たちのフィーも増える。長い目で見ればキオスクでコーラに化けるより、インフラに投資してもらったほうがずっと儲かります。

【田原】面白い。銀行から村全体の底上げをしていくんですね。

【田原】最後に1つ聞きたい。先ほど、合田さんの銀行は金利をつけず、配当を出すといった。これは、いままでの銀行と違いますね。どうして金利をつけないんですか。

【合田】お金の分配ルールを変えたいんです。歴史を振り返ると、これまで資源とお金はお互いにバランスしながら一緒に増えていきました。石油の生産は1850年代から始まって指数関数的に増えてきましたが、お金の総量も同じように増えています。ただ、IEAによると、石油生産のピークは06年。これからは資源が抑えられるので、金利がついてお金がお金を生むという従来のやり方を続けていると、いずれ破綻してハードランディングせざるをえなくなるでしょう。ソフトランディングさせるには、資源が制約された状況下で機能する新しいお金の分配ルールをつくる必要があります。そのモデルとして私が参考にしているのがイスラム金融。イスラムは直接金融のみで、金利のつく間接金融は禁止。同じようなモデルをモザンビークでトライしてみたいなと。

【田原】スケールの大きな話ですね。

【合田】いきなり日本で新しいモデルを定着させるのは無理ですが、そもそも銀行がなかったモザンビークならできる。いま世界の金融システムにアクセスしていない人が20億人いるといわれています。同じような地域で展開して、その地域の人口が増えて40億人になれば、世界の金融の分配ルールを変えることができるんじゃないかと考えています。

合田さんから田原さんへの質問

Q.部活の先輩が本多勝一さん。同年代から見てどう?

本多さんは元朝日新聞記者。リベラル系ジャーナリストの代表的な存在で、その主張が保守系から批判されることが多かった。ただ、日本やアメリカに厳しく、中国や韓国に甘いのは、本多さんに限らず、あの世代のジャーナリストに共通する傾向でした。

なぜあの世代が中国や韓国寄りになるのか。それは罪悪感があるからです。中国には侵略した罪の意識があるし、韓国にも併合して植民地化した負い目がある。だから戦争を直接知っている世代ほど中国や韓国の主張を受け入れ、逆に日本やアメリカに冷たい態度になりやすい。主張の是非はともかく、イデオロギーの裏には世代特有の体験があるということは知っておくべきでしょう。

田原総一朗の遺言:イデオロギーの裏を探れ!

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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