瀕死の安倍政権が息を吹き返す可能性
8月3日の記者会見では、一方で「最優先すべき仕事は経済再生」と明言する。「初心」に戻る姿勢を打ち出した。といっても、内閣改造では、経済政策で注目すべき新構想や新プランの提唱もなければ、人事で経済再生の目玉となる新閣僚の起用もなかった。古証文の「経済最優先」を改めて持ち出しても、政策は弾切れで、手詰まり感は否定できない。
それでも「首相の低姿勢」の効果は表れた。内閣支持率は、改造直後の8月3~4日実施の共同通信の調査で、7月の35.8%から44.4%に、5~6日実施の朝日新聞の調査でも、7月の33%から35%に持ち直した。
各種の疑惑に対する国民の不信は強く、「首相の低姿勢」と問題閣僚交代だけで、「安倍離れ」が解消するとは思えない。だが、攻める民進党は、党首辞任や離党者続出で存亡の危機が続く。「自滅」の安倍政権を追い詰めるパワーもない野党第1党の不振に助けられ、瀕死の安倍政権と安倍首相が、予想以上に早く息を吹き返す可能性もゼロではない。
支持率下落は、首相の前のめり型の改憲姿勢も大きな要因だから、仮に低迷脱出に成功しても、憲法問題とは距離を置くべきだという主張は自民党内でも根強い。とはいえ、「改憲が悲願」の安倍首相があっさりと改憲をあきらめるとは思えない。
昨年7月の参院選で「改憲勢力」の自民党、公明党、現日本の維新の会などの総議席が参議院でも改憲案発議要件の「総議員の3分の2」を超えた。安倍首相は「在任中の改憲」が視野に入ったと受け止めた。今は神妙に「日程ありきではない」と言い始めたが、昨夏以来、衆参で「3分の2」を握った現在の状況で発議と国民投票を、というスケジュールを想定してきたと見て間違いない。現在の状況とは、次の衆参選挙の前というスケジュールを意味する。次期総選挙は来年12月の衆議院議員任期満了までに訪れる。次の参院選は19年夏である。
安倍首相は「来年の通常国会で改憲原案の取りまとめと発議の議決、12月の衆議院議員任期満了の前に国民投票を実施」という日程を想定し、そこから逆算して「臨時国会に自民党案提出」と考えていたのだろう。国民投票と次の総選挙を同日選で実施する案も選択肢にあったと思われる。にもかかわらず、「日程ありきではない」と明言したのだ。