だれが日本国憲法を起草したのか。それはGHQのアメリカ人だ。だからこそ日本国憲法は、アメリカの主導する国際法の秩序と調和している。しかし、日本の憲法学者は「日本国民が制定した」という物語を唱え、「憲法は国際法を凌駕する」「憲法は日米安保を認めない」といった奇妙な解釈を連ねてきた。
 そうした主張の欺瞞性は、日本国憲法の「英訳」を読めば明らかだ。日本国憲法は「国連憲章」や「アメリカ独立宣言」と強く呼応しあっている――。
日本国憲法前文に相当するGHQ草案の一部(写真=国立国会図書館ウェブサイトより転載)

アメリカが描いた「平和国家日本」の設計図

日本国憲法の本来の文脈を復元するひとつの方法は、アメリカ法政治思想の影響を参照しながら、憲法を英語で読んでみることである。

日本国憲法のテキストを、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)起草時のスタイルに近い英語で読んでみると、いくつかの重要な概念、例えば「平和を愛する諸国民(peace-loving peoples)」、「恐怖と欠乏からの自由(free from fear and want)」などが、国連憲章や大西洋憲章(編集部注:1941年8月、ウインストン・チャーチル英首相とフランクリン・ルーズベルト米大統領が合意した、第二次世界大戦の戦後処理の基本方針)と連続性のある概念であることがわかる。憲法は、第二次世界大戦以降の国際法の枠組みを前提にして成立している。

日本国憲法前文より
日本国民
は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeply conscious of the high ideals controlling human relationship, and we have determined to preserve our security and existence, trusting in the justice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international society striving for the preservation of peace, and the banishment of tyranny and slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want. (*1)
大西洋憲章より(*2)
六、「ナチ」の暴虐の最終的破壊の後、両国は一切の国民に対しその国境内において安全に居住するの手段を供与し、かつ一切の国の一切の人類が恐怖及び欠乏より解放せられその生を全うするを得ることを確実ならしむべき平和が確立せらるることを希望す。
(中略)
八、(前略)両国は又平和を愛好する国民の為に圧倒的軍備負担を軽減すべき他の一切の実行可能の措置を援助し及助長すべし。
Sixth, after the final destruction of the Nazi tyranny, they hope to see established a peace which will afford to all nations the means of dwelling in safety within their own boundaries, and which will afford assurance that all the men in all lands may live out their lives in freedom from fear and want;
(中略)
Eighth, (中略)They will likewise aid and encourage all other practicable measure which will lighten for peace-loving peoples the crushing burden of armaments.
国連憲章 前文より(*3)
われら連合国の人民は、 
われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、
基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、
正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、(中略)
……われらの努力を結集することに決定した
WE THE PEOPLES OF THE UNITED NATIONS DETERMINED

to reaffirm faith in fundamental human rights, in the dignity and worth of the human person, in the equal rights of men and women and of nations large and small, and

to establish conditions under which justice and respect for the obligations arising from treaties and other sources of international law can be maintained, and
to promote social progress and better standards of life in larger freedom,(後略)

第2章 加盟国の地位 第4条
1. 国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受託し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。


Membership in the United Nations is open to all other peace-loving states which accept the obligations contained in the present Charter and, in the judgment of the Organization, are able and willing to carry out these obligations.