東電のボトルネックは意思決定の遅さ

7月10日、小早川社長とともに原子力規制委員会に招集された川村会長だが、田中俊一委員長からは「東電には廃炉に対する主体性が感じられない」と厳しい指摘を受けた。川村会長は、その原因の1つに東電の意思決定の遅さがあると分析する。廃炉作業だけではない。昨年4月に電力小売りが全面自由化。自由競争にさらされ、これまで以上にスピーディーな意思決定が求められている状況だが、社員の意識は追いついていないという。

「同じ部門内であっても、セクション間で十分な情報交換がなされず、意思の統合が図られていない。そういう風通しの悪さは東電が地域独占で長い間やってきた弊害の1つでしょう。また、利益を上げていくぞ、という迫力を感じません」

そのような現状で、日立製作所の構造改革のように、東電の改革を成功に導くことは可能なのだろうか。

「取締役会でも話題に上りましたが、日立製作所の構造改革における『100日プラン』と同じような改革工程表が必要になるでしょう」

原発に関する問題だけではなく、20年からの送配電分離、ベースロード電源の検討、社員の企業文化をどうやって変えるか。経営に関係する重要項目は数多く存在する。それぞれの項目ごとに、いつ取締役会に上げ、いつ対外的に公表するかを決めることで、意思決定のスピードアップを図る。

規制委員会では放射性物質であるトリチウムを含んだ汚染水処理も話題に上がった。

「技術的な問題はすでにはっきりしているのに、具体的な解決につながらないまま、資金を投入し続けている。それは不まじめだというのが田中委員長の意見であり、私も同意します」

トリチウム水の処分については、希釈して海洋に放出するのが最も低コストで、現実的な解決案であるとされている。しかし、環境に影響がないようにすると説明しても、すべての関係者からの理解は得られていない。

「これまで東電が全社員でやってきた、現地に行って膝詰めでお話しする、草刈りをするということも、それはそれで非常に大切です。しかし同時に、大きな課題についての意思決定を早くして、実際に対処していかなければ。トリチウム水にしろ、福島第2原発の今後にしても、今まで東電が想定していたよりも前倒しで結論を出すにはどうしたらいいか知恵を絞りたい」