同社の店長は年間数億円の売り上げと従業員数十人を抱える責任者であるが、早い人でじつに入社後1年、平均2年で店長に起用されている。まさに短期速成型育成であるが、それを可能にしているのが「ユニクロ大学」と呼ばれる、内部の機関が保有するスキルや能力育成などの教育カリキュラムだ。この徹底した座学研修とOJTの繰り返しによって社員の成長を促す。

同社は近年400人強の新卒を採用している。うち8割以上が店舗に配属され、店長教育を受けるが、その内容は一般的な企業レベルをはるかに超える密度の濃いものだ。まず2泊3日の集合研修が半年後の10月までに4回実施される。一般的には入社直後の新入社員研修と10月のフォローアップ研修の多くて2回だが、同社は4回を通じて管理職教育も施す。

具体的には初回の研修は社会人としての自覚を促すマインド研修を中心に実施し、段階を踏みながら店長としての実務的な技能・スキルの学習を経て、最終回では採用を含めた要員計画などのマネジメントスキルを習得する。まさに「入社した途端に管理者教育が始まる」(柚木執行役員)仕組みだ。当然、新人にはカリキュラムをこなす自覚と努力が要求される。

「本来なら社会人として認められて、次のステップに進みますが、私たちは一緒にやります。店長候補という位置づけであり、社会人としての学習とマネジャーとしての学習を半分ずつ、このスピードで実施しますということを言ってあります」(橋本真一・人事部店舗人事チームリーダー)

集合研修で学ぶだけではなく、与えられた課題を現場で実践し、その結果を踏まえて次の研修で学習するというように座学とOJTを繰り返すことでレベルアップを図る。また、カリキュラムをこなしさえすれば誰もが店長になれるわけではない。日々の成果が毎月「業務評価」と呼ばれるチェックリストで評価されるが、それをクリアしなくてはならない。

評価シート上に店長に必要なヒト、モノ、カネに関する管理項目が設定され、それができているかいないかを×式でチェックする。まず本人が自己評価し、それを見て店長が評価し、その上の上司が最終評価を下す。仮に×をつけられた場合、所定のトレーニングガイドと呼ばれる教本にしたがって再び学習し、実践でその成果が問われる。当然、どの程度項目をクリアしたのかによって個々人の進捗状況は異なってくる。

そのうえで業務評価の結果を点数化し、一定の水準に達した者のみが店長の資格試験を受けることができる。つまり、毎月の業務評価と資格試験の2つのハードルをクリアしなければならず、その結果「早い人は1年で店長になる人もいれば、1年半、2年、あるいはそれ以上要するなどバラツキが発生する」(柚木執行役員)ことになる。