次世代にバトンを渡すための大胆な改革
【弘兼】復帰して、どういう手を打ったのでしょうか?
【池森】まずは採算が取れないエステ事業などの赤字部門を撤退。創業者しかできない大胆さで進めました。また、従業員の理念浸透のために教育機関を設立しました。そして研究室を500坪増築しました。「うちは研究を大切にする」という意思表示でもありました。それで、研究員が辞めていく流れが止まりました。我々は、サプリメントを販売する企業でここまでやるのかというくらい、iPS細胞などの先端研究を行っています。研究室の規模を拡大したことで、辞めようとした人間が思い留まっただけではなく、新たに優秀な研究員に入ってもらえました。
【弘兼】経営方針も見直した?
【池森】はい。私が経営の舵取りをしていたときは広告費を年間100億円ほど使っていました。ところが近年は売り上げが落ちてきたので、利益を出すために広告費を削って70億円ぐらいにしていた。結果、商品の知名度が十分に広まらず、また売り上げが下がるという悪循環に。私は広告費を150億円に増やし、売り上げをV字回復しました。ただ当然利益は減ります。
【弘兼】直近の利益が減っても、将来を見通して改革する。大胆な手が打てるのは、オーナーだからですね。
【池森】ええ。会社を創業した私でなければ絶対にできないですね。
【弘兼】ファンケルの売り上げ構成比を見ると化粧品6割、サプリメント3割。将来的にこの2本柱の割合はどうなると予想されていますか?
【池森】化粧品とサプリの割合が逆転するでしょう。3対7ぐらいになるはずです。我々に限らず、大手の化粧品メーカーは50代、60代を対象にした化粧品に力を入れています。今後10年くらいはそれでいいでしょう。しかし、その後はどうなるか。
【弘兼】現在の出生率を考えると化粧品を使う人はどんどん減っていく。
【池森】その通りです。一方、健康増進を目的としたサプリメントは、まだまだ成長の余地がある。これから中高年が増えてくると、サプリメントが必要になってきます。そして、日本と同じ動きが15年後に中国でも起きるはず。アジアという広い視点から考えれば、サプリメントのマーケットはこれから何倍にも膨れ上がる。無限大の可能性を秘めていると思います。