「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを」

厚労省は、要介護者の地方移住について否定的だ。2013年にまとめられた厚労省の「都市部の高齢化に関する検討会」の報告書では、「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けられる社会の構築が必要であるということは論をまたない」と結論づけており、さらにこう指摘している。

建設が進む特別養護老人ホーム「エクレシア南伊豆」(仮称)を視察する新宿区の伊藤陽平区議。

「米国には、健康なうちに移住し、健康状態の推移に応じて、同一敷地内で移動の心配なしに暮らし続けられる地域を作っていこうとする取組があるが、様々な世代が共存する地域づくりは一考に値する。地方が都市部からの移住を期待するのであれば、特別養護老人ホームのみを整備し、入所を求めていくのではなく、自立型の住まいを用意し、医療・介護サービスを届けるといった形を目指すのも一つではないかと考える」

杉並区は「姥捨て」の計画に前のめりだが、地方部に特養を整備せずとも、住み慣れた近隣で解決できるのではないだろうか。南伊豆町役場の担当者は、伊藤陽平新宿区議のヒアリングに対して「移住が定着してから特養を整備したほうがよかった」と話していた。都市部のエゴを地方に押し付けることがあってはならないはずだ。