妻は1億6000万円まで相続税がかからない

次に、「相続税の速算表」をもとに各相続人の取得金額に税率を乗じて「各相続人の税額」を算出する。

(妻B)3900万円×20%-200万円=580万円
(長男C、長女D)1950万円×15%-50万円=242.5万円

そして、各相続人の税額を合計して「相続税の総額」を出す。このケースでは、1065万円となる。これを、各相続人の課税価格に応じて割り振ったものが、各相続人の税額となる。

(妻B)1065万円×6850万円/1億2600万円=578万9千円
(長男C)1065万円×3000万円/1億2600万円=253万5千円
(長女D)1065万円×2750万円/1億2600万円=232万4千円

ただし、妻Bの場合、この税額から、「配偶者の税額軽減」を適用できる。この制度は、被相続人の配偶者が取得した正味の遺産額が、「1億6000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い方の金額と、「実際の取得分」とを比べ、どちらか少ない金額までは配偶者に相続税がかからないとするもので、小規模宅地等の特例と同じく、適用を受けるためには相続税申告が必要になる。

妻Bの取得した正味財産は1億6000万円以下なので、相続税はかからない。この特例を利用すると大幅な相続税の減額が見込めるが、「遺産が未分割の場合には適用できない」「最大限使うと二次相続の税負担が重くなる場合がある」といった点には注意せねばならない。

以上、相続税の計算の流れを眺めてきたが、あくまでこれはモデルケースであり、現実には権利関係が入り交じり、難しい評価も多数見られる。さらに、相続税の土地評価は、相続財産において約4割と一番のウェイトを占めるにもかかわらず、個別性が強く、税理士であっても苦手とする人が少なくない。そのため、適正な相続税申告のためには、相続税を専門とする税理士、相続税土地評価に長けた不動産鑑定士などに相談するのが、賢明といえるだろう。

藤宮 浩
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)代表
株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
埼玉県出身。1993年、日本大学法学部政治経済学科卒業。95年、宅地建物取引主任者試験合格。2004年、不動産鑑定士試験合格及び登録。12年、フィナンシャルプランナーCFP登録。04年に株式会社フジ総合鑑定代表取締役に就任し、相続不動産に強い不動産鑑定士として、徹底した土地評価を行うことで有名。主な著書に税理士・高原誠との共著である『あなたの相続税は戻ってきます』(現代書林)『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)、不動産鑑定士・小野寺恭孝との共著である『これだけ差が出る 相続税土地評価15事例 基礎編』(クロスメディア・マーケティング)。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。フジ総合グループ https://fuji-sogo.com/
 
高原 誠
フジ総合グループ(株式会社フジ総合鑑定/フジ相続税理士法人)副代表
フジ相続税理士法人 代表社員
東京都出身。2005年税理士登録。06年、税理士・吉海正一氏とともにフジ相続税理士法人を設立、同法人代表社員に就任。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間600件以上の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。セミナー講演、各種メディアへの出演、寄稿多数。
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