【田原】でも、ハヤカワさんは美大に進学される。ということは、やっぱりデザイナー志望だった?

【ハヤカワ】はい。ただ、デザイナーといっても、グラフィックやポスターのほうです。服飾のデザインもやってみたかったのですが、そちらは専門的な知識が必要。それよりも広告のデザインでかかわりたいなと。

ウツワ社長 ハヤカワ五味氏

【田原】どうして? 洋服がお好きなら、そのデザインをやればいいのに。

【ハヤカワ】中学生や高校生のころ、せっかくいいものをつくっているのに、なかなか売れていない人たちが大勢いたんです。価値あるものを人に届けるためには、伝え方をしっかり考えないといけない。そう考えて、広告の勉強ができるグラフィックデザイン科に進みました。

【田原】大学入学後、ランジェリーブランド「feast」(http://feast.tokyo/)をおつくりになる。

【ハヤカワ】もともと、自分のブランドを立ち上げたいという漠然とした夢を持っていました。たまたまタイツの売り上げで手元にお金もあった。それでまずワンピースをつくって展示会に出しました。そのあと、自分の体形のコンプレックスを解消できる商品をつくろうと、大学1年生の6月に立ち上げました。

【田原】体形にコンプレックスがあったのですか?

【ハヤカワ】体が細くて小さいと、人に対して強く出られず、いじめの標的にされやすいんです。実際、私は小学生のころにいじめられた経験があって、細身であることや胸が小さいことがコンプレックスになっていました。

【田原】そのコンプレックスをむしろ強みにするために、胸の小さい人向けのブラジャーをつくろうとしたわけね。よく知らないけど、市販でそういうブラジャーは売ってないの?

【ハヤカワ】売ってないです。たとえばショッピングモールに下着屋さんが3店舗入っているとします。ぜんぶ回っても、私の体に合うサイズは2着あればいいほう。しかも、なんとか見つけた2着もデザインがかわいくない。これは自分で何とかするしかないなと。

feastの商品ページ。「シンデレラバストの女の子へ送る、ランジェリーブランド。あなただから似合うランジェリーを。」がコンセプト

【田原】ハヤカワさんのような悩みを抱えている女性はほかにもいるんでしょう? どうしてメーカーは小さい人用をつくらないのかな?

【ハヤカワ】数が少なくて、コストに見合わないからだと思います。ブラジャーって、サイズが変わっても価格は基本的に同じ。胸の小さい人用は生産数が少ないのでコストがかかるのに、よく出るサイズと同じ価格でしか売れないとなれば、そもそもつくるのをやめようという話になる。

【田原】たまに小さい人用のものがあっても、デザインがかわいくないと。それはどうしてだろう。

【ハヤカワ】特徴的なデザインだと売れ残る可能性があるから、シンプルで無難なデザインにせざるをえないのでしょうね。私から見たら、大きい人のほうがかわいいやつがたくさんあってうらやましいなと。