ポスト争いするライバルの評判を下げる秘策

子会社役員の争奪戦は半端ではない。ライバルを蹴落とすためにあらゆる策を弄する輩もいる。ときにはライバルに不利になる醜聞を流す。不動産会社で、子会社の役員人事を決める直前に担当取締役から「候補だったA部長がクライアント先の女性課長と親密な関係にあるとの噂があるらしい。調べてくれないか」という依頼が人事部にあった。人事部が女性の勤務先の親しい関係者に当たったところ、確証はないが付き合っていると情報を得た。その結果、A部長は役員候補を外され、代わってB部長が子会社の役員に就任したという。同社の人事部長はその理由をこう語る。

「社内不倫など女性関係を理由に処分したり、候補から外すことは一般的にはしない。なぜなら経営陣もそれなりに後ろめたい関係があるので、それを処分したら逆に刺されかねないので寛容になりがち。ただし、相手がクライアント先の女性となると話が違う。ビジネスにも影響を与える恐れがあるからだ。噂の出所はB部長だというのは最初から推測できたが不問に付した」

人事部長によると、女性関係で問題視されるのはクライアントの女性以外に、役員の情報を知る秘書と社員の妬みを買いやすい“社内きっての美女”だという。だが、女性問題をネタに追い落とすのは、自分の身にはね返ってくるリスクも大きい。

役員になるために仲良くなるべき部署とは

追い落とすための正攻法はライバルの所属部門の業績不振の情報を社内に流すことだという。「業績の詳しい情報を握っているのはトップ層と経営企画と人事。ただ、この三者は口が堅い。じつは情報を早く掴んでいるのは事業管理部門。この部門の社員と日頃から仲良くして情報を仕入れ、社内問題化すれば追い落とす正当な理由にできる」(建設関連会社人事部長)。

子会社の役員ポストが棚からぼた餅で舞い込んでくることはない。多少のリスクを覚悟して、したたかに準備しなければ奪い取ることができないのだ。

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