石原慎太郎の責任と築地の衛生問題
さて、ここで15年5月に実施された調査に戻ろう。水産物部は実態調査をしていないのでわからないが、第6卸売業者売場では20匹いるとある。単純に、先の比率をそのまま生息数に適用すれば2000匹のネズミが水産物部にいる試算となる。これに、全体の500匹をプラスして、重複する20匹を引き算すれば、2480匹のネズミが築地市場(場内)に生息している計算である。これに築地市場(場外)のネズミの数を加算する必要がある。中央区保健所の担当者によれば、築地市場(場外)の周辺に置いたネズミ捕りで、毎年350匹のネズミをコンスタントに捕獲するということであるから、水産物部以上のネズミが生息している可能性がある。となると、築地市場全体で5000匹以上のネズミが生息している試算になる。あくまでここでの数字は推計に推計を重ねたものであることを強調したいが、築地をよく知る公衆衛生の関係者は、「都の500匹」という報道に接して「そんなに少ないはずがない」と考えたという。数字が独り歩きしてもらっては困るので、やはり安心のためのネズミの生息数調査を、築地市場の場内・場外問わず早急に実施してほしい。調査は3日でできる。
築地市場に生息しているのは、大多数がドブネズミである。ドブネズミは下水道や排水溝の中を移動するため、病原菌を持ち運ぶ危険性が高いので非常に危険な動物である。さらに建物が閉ざされていないので、24時間365日、カモメ、カラス、ハトがやってきては食材をつまみ食いしている。いつか食中毒が起きるのではないかと、私はヒヤヒヤしている。
私は築地市場の危険性について、これまで何度も繰り返し指摘を続けてきた。原爆マグロが埋まっていること、米軍が使用した化学薬品で汚染されている可能性があること、などだ。豊洲へ移転した築地市場の跡地を掘り返すと何がでてくるかわからないので、地面を掘り返すことはできないだろう。原爆マグロにどの程度の放射性物質が含まれているかは不明だが、プルトニウムの半減期は2万4000年である。実際に築地市場跡地につくる道路の計画では、築地市場地下の危険性を念頭に、トンネルを掘ることは断念した経緯があるくらいだ。
確かに、汚染物質がコンクリートの下にあるから安全だというのはその通りだ。しかし、ネズミはコンクリートの上の問題である。
対する豊洲市場はどうだろうか。ベンゼンが出てきて危険だというが、1リットルあたり0.01グラムのベンゼンを含有した水を1日2リットルずつ70年間飲んだ場合、10万人に1人ががんになりやすくなるという。この程度の水が市場とは隔離された地下空間から検出されたからといって何が問題なのか。小池知事の決定に同情的な声がでているのも知っている。豊洲の水産物卸売市場棟などの建設費が99.7%の落札率だったことは私にも違和感がある。そして、石原慎太郎元知事の下した決定過程にも何らかの落ち度があったのかもしれない。
しかし、である。それが豊洲市場の食の安全・安心と何の関係があるのだろうか。私たちは、今、理性的に判断をしていかねばならない。
正直なところ、築地直送と謳っている寿司屋など私は絶対入りたくない。黒いネズミに会うのはディズニーランドで十分ではないか。ディズニーランドのレストランだって殺鼠剤を撒いて、衛生上危険のあるドブネズミを駆除しているはずだ。
安全・安心に関して、築地市場は落第点であり、豊洲市場は100点満点なのである。