誰も法律上の責任を負わないシステム

特に心配されているのが、支払い能力の低い未成年者が、保護者に無断でこのサービスを利用してしまうことだ。これについてスタートトゥデイは「支払い方法の選択画面で、『未成年者の方は保護者の同意を得たうえでご利用ください』の文言を表記しております」と回答しているが、果たしてそれで十分なのだろうか。

消費者問題に詳しい池本誠司弁護士に話を聞いた。

「ポイントは『2カ月以内の後払い』という点です。2カ月を超える場合は、割賦販売法により、利用者の信用調査が必要になります。しかし、『ツケ払い』は2カ月以内なので、割賦販売法の適用を受けない。そうすると、ゾゾタウン側は、消費者の支払い能力の有無を判定せずに商品を販売できるのです」

「『ツケ払い』はゾゾタウンが決済代行業者から立替え払いを受ける仕組みなので、実際には、クレジットカードと同じく信用販売をしていることになります。また、現金を直接貸し付けるなら貸金業法にあたるので、決済代行業者はやはり信用調査が必要になり、収入の3分の1を超える貸付は法律で禁じられています。しかし、『ツケ払い』はあくまでも立て替え払いですので、こちらの法律にも触れません」

つまり、「ツケ払い」は法の抜け穴をうまく利用したシステムであり、ゾゾタウンも決済代行業者も法律上の責任を負うことなく、支払い能力の不明な消費者に商品を信用販売できるのだ。

仮に、未成年者が親の承諾なしで「ツケ払い」を利用して商品を購入した場合、どのように対応すればいいのだろうか。

「民法5条では、未成年者が親の承諾を得ないで単独で行った契約は、後から取り消すことが可能とされています。どのような場合に取り消しが可能になるかというと、未成年者でもアルバイトや小遣いなどにより、月々になんらかの収入を得ている場合がありますが、その収入を超える買い物をしてしまった場合です。たとえば月に1万円しかお小遣いをもらっていない未成年者が、3万円の買い物をしてしまったときには取り消しが可能になります」(池本弁護士)

未成年のみならず、支払い能力の低い者にもリスクはある。「ツケ払い」を利用した結果、消費者が支払い不能に陥ってしまった場合には、「債務整理法で対処するしかない」(池本弁護士)という。

若者に人気のゾゾタウン。魅力的な商品を取り揃えているが、消費者への訴求はそれで十分ではないだろうか。「2カ月待つなんてできないよ」という煽り文句で宣伝すべきだったのか。企業の姿勢が問われている。