発表会開催を急いだ裏にパナソニックあり?
断っておくが、「ライオンズマイボックス」にイチャモンをつけているわけではない。居住者全員に宅配ボックスを割り当てて再配達率を削減しようという発想自体は素晴らしいと思う。ただ、それを広く世にPRしていくには、実証実験やユーザーの声などまだ材料が足りていないのである。
たとえば、発表会ではメディアの記者たちから「ライオンズ東綾瀬グランフォート」購入者の「ライオンズマイボックス」に対する反応を問う声が上がったが、大京の担当者からはあやふやな答えしかかえってこなかった。無理もない。マンションギャラリーでは、発表会でお披露目したようなデモ機はもちろん、この画期的な新型宅配ボックスを購入検討者たちがイメージできるようなディスプレイなどもなく、営業マンが資料を手に口頭に説明をしているというのだ。
では、なぜこのような段階にもかかわらず、大京は「ライオンズマイボックス」の発表会を催したのだろうか。
先ほど述べたように、実際の導入はまだ先である。確かに「宅配クライシス」はトレンドワードだが、そう簡単に解決できる問題でない以上、長期的なテーマでもある。ならば、ここで焦って打ち上げ花火的なPRをするよりも、さまざまな材料を揃えてから普及へ向けて本格的なPRを展開したほうがはるかに得策である。
にもかかわらず、メディアを招いてこのような発表会を開いたというのは、このタイミングでPRをしなくてはいけない「事情」があったととらえるべきではないか。
大京の担当者にそのあたりを聞いても言葉を濁すのみだったので、真相はわからないが、ひとつ気になることがある。大京の発表会の1カ月ほど前に出たこのような報道だ。
「宅配ボックス販売台数10倍めざす パナソニック、3種追加」(日本経済新聞 3/6)
実は、パナソニックは現在、戸建て用の宅配ボックス事業にかなり力を入れている。昨年11月から今年3月までは福井県あわら市で106世帯をモニターに実証実験をおこなっており、2月に出した中間報告では宅配ボックスの設置で再配達率が49%から8%に減少したことも大きな話題となった。
そしてパナソニックは先月、同社初となるアパートなどの集合住宅用で、後付けできる宅配ボックス「COMBO-Maison(メゾン)」を新たに発売することを発表。2018年度には販売台数を、2015年度の一気に10倍となる3万台を目指すとした。
この報道のインパクトはすさまじく、パナソニックには宅配ボックスの注文が殺到。製品供給体制が追いつかなくなったということで「COMBO-Maison」などの新製品の発売が延期されるというアクシデントまで起きた。つまり、今年2月~3月というのは「宅配ボックスといえばパナソニック」という報道が世に溢れた2カ月だったと言い換えることができるのだ。
これが今回の「ライオンズマイボックス」のPRに与えた影響はないだろうか。
戸建てやアパート向けの宅配ボックスならば、「ライオンズマイボックス」とはまったく関係ないじゃないか、と思うだろう。確かに、パナソニックの宅配ボックスが3万台になったところで大京には特に影響はない。しかし、大京の「パートナー」からすれば、このような報道があふれるのは由々しき事態なのだ。