宅配便最大手のヤマト運輸が、宅配便の基本運賃を27年ぶりに引き上げる方針を固めた。対象は個人を含む全顧客で、アマゾンジャパンなどの大口顧客との交渉にも入った。

料金改定そのものは不可避だ。インターネット通販の普及による荷物量の増加や人手不足問題など、宅配便業界を取り巻く環境は激変しており、ビジネスモデルを考え直すべき時期に突入している。

最大の問題は再配達の増加だ。配達日に受取人が不在で当日の再配達依頼が多くなると、その日の荷物量が確定できず配達の見通しも立てにくい。荷物量における再配達の割合は年々増え続けており、現在約2割。配達員の長時間労働の一因でもあり、人手不足問題とともに働き方改革の観点から見直しが迫られている。

既に4月24日から再配達受付の締切時刻を20時から19時に早めることが決まった。配達時間帯の指定枠も従業員の昼食休憩を取りやすくするため「正午から14時」を廃止。「20時から21時」は1時間しかなく配送が集中するため、「19時から21時」へと枠を拡大する。その他、宅配ボックスやコンビニ受け取りなどのピックアップポイントの拡充など、再配達の抑制に向けた施策が求められる。消費者にも再配達の負担について理解を深めてもらえるように積極的な発信が必要になる。

佐川急便や日本郵便などの同業他社も、再配達の負担増や人手不足といった課題は同様だ。マーケットを事業として継続可能なバランスに立て直したいという思いは業界の総意でもある。ヤマト運輸と足並みをそろえて値上げに踏み切るだろう。

法人の大口顧客とは毎年交渉しており、一度合意したものを変更することは容易ではない。特にアマゾンジャパンはタフな交渉相手だ。料金改定は早くて今年の夏か秋といったところに落ち着くのではないか。

(構成=衣谷 康 撮影=宇佐美利明)
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