ネットビジネスの先行企業が金融界の黒船に

メガバンクを筆頭に日本国内の金融機関各社は、欧米のフィンテックの最新動向に影響を受けながら、その潮流に乗り遅れないよう新たなチャレンジを続けている。しかし、今後の金融界を大きく動かす可能性があるプレイヤーは、既存の金融機関だけではない。

『まるわかり FinTechの教科書』(丸山隆平著・プレジデント社)

たとえば楽天グループ。金融業では新顔だが、そもそもはネットショップの運営から事業の領域を次々に拡大。決済システム、ポイントシステムを整えていたことから、EC市場が拡大するにつれて金融に進出してきた。本来は金融業ではなかったが、ネットビジネスで強大な力をもつ企業が、フィンテックを機に金融業に乗り出してくる――この流れは、日本の金融業にとっての“黒船襲来”となる可能性を大いに秘めている。

具体的な企業でいえば、Apple、Google、Amazon、Facebook、カカクコムなどである。

楽天や米Amazonが始めた、ネット通販の出店者への融資事業が、フィンテックの先行事例として注目されている。また、国内最大規模のインターネット比較検索サイトを運営するカカクコムは、2016年中に中小通販業者の資金繰りを支援するサービスを開始すると発表した。彼らの強みは、出店者の過去の売上推移、取引履歴、消費者の評価などのデータをすべてもっていることにある。金融機関に頼らなくても、店子の信用を把握、精査することができるのだ。

Amazonジャパンは2014年2月から、法人販売事業者向けの融資サービス「Amazon レンディング」の提供を始めた。ローン申し込みから最短5日間で運転資金の調達が可能で「資金繰りの心配をすることなく、商品の充実や成長戦略を考えほしい」と担当者は語っているという。

また、決済業務に乗り出そうという動きもある。Googleは2016年3月、新しいモバイル決済サービス「Hands Free」のテスト運用をシリコンバレーで開始した。特徴は、支払時に店員に「Googleで」と伝え、自分のイニシャルをいうだけで支払が完了すること。店員は専用端末でイニシャルをもとに顧客を検索し、表示される顔写真で本人確認する。利用者はいちいち端末をリーダーにかざす必要がないため、両手がふさがっていても決済ができるのは非常に便利だという。

まさに“検索”というGoogleのお家芸を店頭決済に持ち込んだわけだ。