FinTechによって金融業は「サービス業」になる
Facebookを使った送金サービスを楽天が始めている。同社のホームページでは、飲み会の会費を払うのに口座情報は必要がなく、無料のアプリをダウンロードして、5分程度で振込みが完了するストーリーを紹介している。同様のサービスはLINE(LINE Pay)も展開しており、フィンテックが若者を中心に当たり前のサービスとして利用されるシーンが広がろうとしている。
また、スマートフォンで大きなシェアを占めているAppleは、すでにApp Store、iTunes Storeなどでの決済機能をもっている。今後、なんらかの形で、これらの機能を拡大していく可能性は十分にあるだろう。
2015年11月、米国で「Financial Innovation Now」という、フィンテック推進のためのロビー活動展開を目的とする団体が結成された。構成メンバーは、Apple、Google、Amazon、Intuit(会計ソフト)、PayPalの5社。「巨大銀行らがフィンテック業界の規制強化を求める動きを封じ込めることを目的とする」という。
ここに挙げられた企業は、いうまでもなくインターネット時代の申し子と言える存在。スマートフォンアプリ、検索サービス、EC(電子商取引)、会計ソフト、スマートフォン決済など、消費者向けのIT分野で先行し、すでに大きなシェアを確保している。
フィンテックによって金融業は「サービス業」になっていく。インターネットによる消費者向けサービスにおいて、世界でもトップクラスの実績をもっている彼らが、異業種ではなく同業者になったとき、すなわち彼らが本気で金融業に乗り出してきたとき――フィンテックはさらに次の段階に進むことになるかもしれない。
※本連載は『まるわかり FinTechの教科書』(丸山隆平著)の内容に加筆修正を加えたものです。
1948年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。1970年代、日刊工業新聞社で第一線の経済・産業記者として活躍。企業経営問題、情報通信、コンピュータ産業、流通、ベンチャービジネスなどを担当。現在、金融タイムス記者として活動中。著書に『AI産業最前線』(共著・ダイヤモンド社)などがある。