「プレ金」は有給休暇消化の手段となっている!

――働き方改革の観点で、導入の意義はありますか。

【医療】やる意義はあると思いますが、うちの管理職がそこまでマネジメントできる能力はないだろう。残業時間削減の取り組みはこれまでやってきて月の平均残業時間を20時間に収めているので労基署に踏み込まれても怖くはない。ただ、今も定時退社日を設けて、早く帰るように働きかけているが、なかなか定着するまでには至っていない。まずそういうことを定着させてから次のステップとして「プレ金」を考えるのはありだと思います。

【食品】その通り。むしろノー残業デーをしっかりと定着させるという地道なやり方が一番いいと思う。経団連は働き方改革の一環として推奨していますが、実際にやるとなるとそんなに簡単な話ではなく、ハードルが高い。結局、「プレ金」を導入できるのは大企業と公務員だけで、多くの企業では導入できません。無理に導入すれば、それこそブラック化するはずです。

【住宅】働き方の意識改革をするのであれば、定時退勤日を設けるのがまだいいやり方だ。社員に対して「時間は有限です。8時間の中で効率的に仕事をしてください」というのが大事なメッセージだと思っている。働き方を社員に考えてもらう機会としてはそれで十分です。最初、「プレ金」の話が出てきたときはどこの業界の差し金かと疑ったくらいですよ(笑)。

――「プレ金」導入をメデイアに取り上げてもらったり、就活中の学生にアピールしたりする企業も出ています。

【食品】あまり意味はないと思う。しかし政府主導ということで、「プレ金」の導入を自社のホームページで謳っているような企業もある。あたかも企業のブランド価値を高める証のように扱われてしまうと、いっそう誤解を招くのではないでしょうか。

【住宅】しかも導入企業のほとんどが有給休暇を使うようにと指示しているが、有休を使う、使わないは個人の自由意思。強制的に取得させることはできないはずです。もちろんうちも有休取得を奨励するために計画休暇を実施しているが、それも年間たったの2日間。それ以上は強制できないし、「プレ金」のために上司が有休消化を指示するというのはやり過ぎだと思います。早帰りを実施している会社の中にも、仕事が終わらないのにどうするんだ、はた迷惑だと感じている社員も多いのではないでしょうか。

「プレ金」商戦にかり出させる社員は早帰りとは無縁

3社の人事部長は「プレ金」導入について総じて否定的だ。一方、経産省に「プレ金」のロゴマークの使用を申請した企業は6000社を超える。その多くは百貨店、飲食、旅行・金融などサービス・小売業だ。サービス供給側にとっては商売のチャンスかもしれないが、当然「プレ金」商戦に駆り出される社員にとっては3時の早帰りとは無縁だ。
日本企業の過剰なサービスが長時間労働を生んでいる原因と言われるが、労働人口の多くを占めるサービス業従事者が「プレ金」によって労働時間が延びることになればそれこそ「働き方改革」にとって本末転倒だろう。
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