「月末金曜は、少し早めに仕事を終えて、ちょっと豊かな週末を楽しみませんか?」――。こんなキャッチコピーを掲げて、経済産業省が進めているプレミアムフライデー(「プレ金」)。経団連もその趣旨に賛同し、榊原定征会長の名前で会員企業に対し、「プレミアムフライデー実施期間における柔軟な働き方の推進へのご協力のお願い」という文書を送っている。
しかし、3時終業に向けた動きは一向に盛り上がってはいない。マクロミルが「プレ金」1回目の2月24日について実態調査(会社員・公務員1万5000人)を行っている。その結果は「今のところ導入される予定はない・わからない」が91.6%を占めた。導入されていると回答した人は6.5%だが、そのうち早帰りの対象の人は3.5%。そのうち実際に2月24日に早帰りできた人は半数強の55.5%にすぎなかった。結局、「プレ金」の狙いが、働き方改革よりも消費喚起にあることが、バレてしまっているのだろう。
2月24日、年度末の3月31日の2回、「プレ金」が実施されたことを受け、今回、医療機器メーカー、食品メーカー、住宅設備メーカー3社の人事部長による匿名座談会を開催した。3社はいずれも「プレ金」を導入していない。その理由とは――。

ビジネス上の損失が大きいから導入しない

――「プレ金」を導入しましたか。導入しないとしたら、その理由とは何でしょう。

【医療】導入していません。一応会社として働き方改革の一環として導入を検討しましたが、結論はやらないことに。商売の相手は病院が中心ですが、病院は基本的に土日が休みになるので金曜日は検査機器類の納入業務でとくに忙しい。こっちとしては取引先の病院などが「プレ金」なので早帰りされたら逆に困ることになるし、ビジネス上の損失が大きいということで導入しませんでした。

【食品】同じくうちも導入していません。やろうと思えば事務方の社員は早帰りできるでしょうが、販売・飲食店舗も持っているのでそこの社員は逆に忙しくなる。「早帰りするなんてふざけている」という批判が飛び出すのは必至。それこそ現場の営業マンは、飲食店から「3時に帰るなら店舗の手伝いに来い」といわれかねません。

2月の「プレ金」は給料日だったので居酒屋さんにとってはかき入れ時ですが、聞いた話では「3時に仕事が終わったら、そのまま飲み屋に行くよりも帰ってしまうんじゃないか」と怒っていたそうです。3時は個人の小さな居酒屋さんはまだ仕込みなどの準備時間。大手のチェーン店と違ってそんなに早く開店することはできません。

――3時に開店するにしても、その分アルバイトなど人の手当をしないといけないし、それこそ客が来なかったら赤字ですね。

【住宅】うちも結局導入しませんでした。社長はやりたかったらしいのですが、営業本部から「月末の締めの時期に早帰りすればお客さんに迷惑をかけるし、営業的に損失だ」という批判が出たのが理由です。「プレ金」を導入して短縮した就業時間のしわ寄せは、他の日に必ず残業としてはね返ってきます。