【荻野】教授は現在、マインドフルネスや思いやりについて研究されているそうですね。
【ドゥティ教授】思いやりを持つ、つまり、人の苦しみに気づく、なんとか助けてあげたいと願うことは、人類の進化に不可欠なことでした。私はスタンフォード大学に戻ってから、ルースの教えの何が私の脳や心に強く影響したのか、科学的に証明することに没頭しました。マインドフルで思いやりを持っている状態は、副交感神経が働いている状態です。副交感神経が活性化されているときに人の脳は最も創造性や生産性が高い状態になります。そして、受容的で、恐れがない状態になっています。一方、(現代社会に蔓延している)恐れは交感神経を刺激します。そうすると、自分を守るために自分を閉ざし、人との関係も閉ざしてしまいます。思いやりを示し、本当の自分を表現することができなくなる。このような状況では、人を信頼することができなくなり、人とつながりにくい。愛することもできなくなります。
【荻野】だからこそ、マインドフルネスで本来の自分を取り戻し、恐れをなくす訓練は有効なのですね。
【ドゥティ教授】思いやりを持っている状態は、血圧が下がって、健康状態もよくなる。よく大学の講義でも言うのですが、マインドフルネスはお金がかからず、副作用もない最高の薬です。
【荻野】「忙しすぎて実践する時間がない」という声を聞きます。
【ドゥティ教授】忙しい人ほどより多くの時間を瞑想に当ててほしいと思います。どんなときでも、15分、20分という時間を捻出することはできるものです。また、実際にトライしたけど、効果がないのでやめてしまったと言う人もいますが、忍耐強く、それぞれのステップを楽しみ、変化を観察してください。大切なのは、自分にどのような影響が出たかに細かく気を配り、変化に耳をすますことです。
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。積水ハウス、アーサーアンダーセンを経てベンチャー企業で上場という目標を果たすがその後、燃え尽き症候群になってしまう。そんなときに、友人に誘われて行ったヨガスタジオで瞑想を経験。2008年に独立し、マインドフルネスを普及するべく活動。2013年より現職。