仕事や生活環境の変化により、イライラすることが増えていないだろうか。そういう時は、ひとまずゴロンと横になるといい。身体心理学が専門の菅村玄二・関西大学教授は「仰向けで横たわる姿勢には、怒りを抑制する効果がある。『果報は寝て待て』ということわざは、苦難の時代を生き抜く叡智かもしれない」という――。(後編/全2回)
心を整える「マインドフルネス」のアプローチ
新型コロナウイルスの影響が長期化し、「新しい生活様式」が求められるなか、巷でもストレス対処や感情のコントロールへの関心が高まり、さまざまな情報が発信されている。ここでは身体心理学の観点から、わりと簡単に実践できる日常生活上のヒントを提供したい。身体心理学とは、早稲田大学名誉教授であった故・春木豊氏によって体系立てられた「体と心のありよう」だ。身体を基軸とした感情制御に関する実験心理学がベースだが、その背景には禅、ヨガ、太極拳、呼吸法などの東洋的行法や仏教や道教の哲学もある。便宜的に、禅のキーワードである「調身・調息・調心」という言葉に沿って解説する。前回取り上げた「調身・調息」に続いて、今回は「調心」を紹介する。
調心:精神からのアプローチ
「調身、調息、調心」と言ったとき、本来は身を整えて、息が整い、その結果として心が整うという順序の意味合いが含まれている。身体心理学でも、そうした順序を因果的に捉えて実験をしているが、理論上は体と心は一つ(身心一如)という立場をとる。その意味では、順序自体が重要というわけではなく、むしろ心を整えることで、息や身が整うと理解したほうがわかりやすい実践法もある。ここでは、「調心」を主眼とするワークとして、マインドフルネスを紹介する。