悩み、迷うことを思い切って「捨てる」

49歳で人生初の転職を経験しました。当然ですが、今まで培った経験やスキルはほぼ生かせません。かわりに、今まで見えていなかったものが見えるようになりました。何もかもが新鮮で、新しい人脈も増え、次から次へとやりたいことが出てきました。それで痛感したのは、今までの自分がいかに「やらない」を決めるのが下手だったかということでした。

キャリアアップすれば、仕事の幅は広がります。そういうときにこそ、自分が何をやらないかを決める必要がある。自分が本当に「やりたいこと」は何かを考え抜くためにも、たくさんの可能性の中から自分の「やること」を取捨選択しなければいけません。

それは大きな目標に限ったことではありません。私は2016年、ツイッターやフェイスブックなどのSNSをできる限りやめました。結局、ツイッターでは2016年にひと言も呟かなかったし、フェイスブックにアップしたのも1年間で2回くらい。それだけで、おそらく何十時間か自由な時間が生まれました。

2017年はさらにメールにかける時間をできる限り削るつもりです。毎日何十通も来るメールを、テンポよく処理していこうとすると、よく考えて丁寧に返信すべきメールをどうしても後回しにしてしまう。簡単に返信できるメールから片付けてしまおうとするんですね。でも、それをやっていると結局は時間切れになって、重要なメールの返信に時間がかけられないという本末転倒が起きる。だから、メールの返信は必要なものだけに限る。

講演依頼など、頼まれごとを断るときも同じです。今までは断るのが悪い気がして、相手を傷つけないように言い訳をしたり気を使っていましたが、それもやめようと思っています。相手にとっては、いくら言い訳をされても、断られるという事実は同じなわけですから。ぐずぐず悩むのをやめて、できませんと断ればいい。そのほうが自分も相手も時間を節約できます。

そうやって日常の小さな「迷い」を断ち切れば、意味のない罪悪感に囚われたり迷ったりする時間を、もっと有意義なことに使えるようになるでしょう。私自身は、読書のペースを上げてたくさん本を読みたいし、効率よく運動して体を鍛えたい。歌舞伎を観たり、生け花をしたり、もっと美術館に通っていい作品に触れて、自分の感性を磨きたい。仕事の正解というものがなくなってしまった現代では、感性がもっとも重要な武器だから。

そして、自分が本当にやりたい仕事に集中して取り組む。そうすれば、要領が悪くてもいい仕事ができるし、やりたい仕事をもらえます。遠回りのようでも、それがキャリアアップにつながる王道だと私は信じています。

▼「キャリアを築く」ためのアドバイス

▼今年「やりたいこと」リスト6


1. 「やりたいこと」を考え抜く
2. 「やること」の取捨選択
3. 読書のスピードを上げる
4. 効率よく運動する
5. 文化への感度を上げる
6. メールの時間を削減

フィンテックなど今日的なテーマの本を効率よく読み進めたい
 
▼今年「やめるべきこと」リスト5


1. 捨てることを決める
2. 後回しをなくす
3. 保管しない
4. 断る罪悪感をなくす
5. 小さな迷いをなくす

用事やメールと同様にモノの保管もなるべくしない
 
(石川拓治=構成 永井 浩=撮影 AFLO、Startraks/AFLO=写真)
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