これから私たちはどのように働き方を変えていけばいいのか。JR東日本に入社後、『ecute』プロジェクトを立ち上げ、「エキナカ」の文化を定着させた鎌田由美子さんは「よそものとして地方や異業種などのアウェイに飛び込み、新しい知見は積極的にわかものから学びとることが重要になる」という――。
青森駅に隣接するシードル工房「A-FACTORY」。シードルからアップルブランデーまでを作る工程がガラス越しに見える。
Interior Design=Wonderwall Photo=KOZO TAKAYAMA
青森駅に隣接するシードル工房「A-FACTORY」の外観。

「見た目が悪い」という理由で二束三文にされるリンゴを活用

JR時代の地域活性化事業の中でも、特に青森の「A-FACTORY」事業からは多くの学びを得ました。

「A-FACTORY」は、青森の名産品であるリンゴからできるシードル(発泡酒)の工房です。シードルの試飲もでき、カフェ、地元の加工品や野菜、果物を取り扱うマルシェも併設しており、観光客だけでなく地元の方も訪れるスポットになっています。

もともと東北新幹線新青森駅開業に合わせ地元貢献できる「何か」を考えて企画しました。地域の資産を活用して、観光に貢献でき、さらに拡大の可能性を秘めたもの、という視点で考えた時、思い浮かんだのがシードルでした。規格に合わない、見た目が悪いという理由で二束三文になってしまうリンゴを活用し、フランスノルマンディーにあるようなシードルを中心にした観光地ができたら楽しいなと考え、シードルやアップルブランデーの工房を企画しました。

これまでディベロッパーや販売の経験が長かった私がなぜ加工に興味を持ったか。それは、現場で見た光景や聞いた話との価値観の違いに驚いたからでした。見た目の美しさや規格が全てで、その基準に合わないリンゴは二束三文の値段にしかならず「つぶしてジュースにする」という話を訪れる先々で聞きました。そして、加工をすること自体「めぐせえ(みっともない)」。そんな言葉に驚きました。