モノだけでなく人もサイクルに組み込まれていく

日本がこれから、世界を舞台に戦えるそんな素材が各地に山とあります。エシカルな観点からも、地産品はビジネス面でも大きなポテンシャルを秘めていると思います。ただ、そうした製品を手掛けている生産者の人たちにとっては、あまりに身近過ぎてその生産品や商品が持つ価値に気づいていない、ということも多いのです。そこでダイバーシティでもある「よそもの」の視点が必要になるのです。

青森駅に隣接するシードル工房「A-FACTORY」。シードルからアップルブランデーまでを作る工程がガラス越しに見える。
Interior Design=Wonderwall Photo=KOZO TAKAYAMA
青森駅に隣接するシードル工房「A-FACTORY」の様子。

素材そのものが持つ価値を生かしながら、生活者が求めている形に近づけるだけで、手に取ってもらえるようになる。生産者や地元が気づかない価値と、お客様である生活者のニッチなニーズをつなぐ、そんな橋渡しをしたいということからONE・GLOCALを立ち上げ、ものづくりにも自ら参画し、地元との共創事業に取り組んでいます。コロナ禍で働き方や生き方の価値観も大きく変わった方も多くいます。地域に根ざす一次産業を身近に感じてもらえるチャンスでもあり、そんな人達が関われる場にもしていきたいと願っています。

サーキュラーエコノミーはこれからの消費のベースだと思います。自然や地球環境に良い循環は、別の良い循環を生み出しもします。例えば先のシードル工場。「リンゴ農家を継ぐのは嫌だ」と一度は出ていってしまった若い人たちが、「シードルも作れるなら携わりたい」と実家に戻り、農家を継いだという話を何軒も聞きました。

素材のりんごと、加工品のシードルを両方作るという広がりは、農業から離れがちだった若い世代を再び農業に引き込むことができ、さらに新事業を軸に農家同士の横の連帯が生まれてくれば、より大きな、地域の新しい事業に挑戦することもできます。りんごというモノだけでなく人もそのサイクルに組み込まれていくのです。

誰もが「よそもの」を受け入れる側にもなりうる

「よそもの」の視点が必要だ、といった際に多くの方が危惧される通り、それまで縁のなかった人があるコミュニティに入っていく際には、最初は誰しも警戒されるものです。お互いの相性もあり、スムーズに入って行けるケースもあれば、一年経ってもなじめないというケースもあります。しかし、それは勇気を出して、入っていってみなければ分からないことです。

そもそも、誰もが自分の村を出て隣町に行けば「よそもの」。自社を出て他社に行けば「よそもの」です。と同時に、誰もが「よそもの」を受け入れる側にもなりうる。常に外側からの視点や価値観をミックスし、あるいは自分が外側からものを見ることによって、新しい視点や価値が生まれる――。私自身、その効果をこれまでのビジネスを通じて実感してきました。