“第2の野菜くらぶ”は成功するか
――グループ全体では、生産(1次産業)から、加工(2次産業)、流通(3次産業)まで手がける6次化を実現しています。これから農業の6次化に興味を持つ生産者に対し、アドバイスするとしたらどんな言葉をかけますか。
【澤浦】農産物を加工すれば付加価値がついて売れると考えがちですが、それは早計です。やはり、もととなる農産物に競争力がなければ、加工しても魅力ある商品にはならないと思います。ですから、農産物それ自体を、「あそこのものがいい」と選ばれるものにしていく。あとは、自分たちが拠点を置く地域の強みをどう生かしていくかを考えることも大切でしょうね。
――安易な6次化は失敗すると。
【澤浦】そう思います。当社でも少し前まで、農業に熱い思いを抱えてやって来た若者が、2、3年で辞めてしまうことがありました。「野菜くらぶのように、自分たちで販路を開拓する事業をやりたい」。そう言って出ていくわけです。でも、それは無理だよって私は言うんです。なぜなら、野菜くらぶがここまで成長できたのは、それを後押しした時代背景があるからです。農家が自分たちで売り先を見つけられなかった時代に、なんとかそれを実現しようと思って自分たちはやってきた。お客さんと一緒に成長してきたわけです。
たとえばいまの時代、クルマ好きな人がトヨタでしばらく修行した後、第2のトヨタをつくるんだと言って起業する人はいますか? いませんよね。すでに市場が成熟し、プレーヤーも再編・集約されているなかで、いまから自動車メーカーをつくろうという人は出てこないわけです。農業でも同じような状況になっていくと思います。これから“第2の野菜くらぶ”を狙っても、成功するかどうかはわかりません。
それよりも、私が家族経営の農家だったら、「野菜くらぶ」に野菜を出荷する側の生産農家でいることを選びますね。自分たちで値段が決められるのなら、生産に特化したほうが豊かな生活ができますから(笑)。
――規模が大きくなるほど割に合わない、と農業生産法人の社長さんは皆さんおっしゃいます(笑)。では、自社の将来を考えたときに、取り組むべき経営課題は何だと思われますか。
【澤浦】一番重要なのは商品開発です。なぜなら、商品開発=顧客の創造だからです。もうひとつは生産性の向上。生産の競争力を高めると同時に、働く人たちの福利厚生の充実も含まれます。