【5】公的年金で十分 vs 個人型年金で備え

▼増殖する保険ショップ商品選びは慎重に

少子高齢化で国の財政は年々厳しくなっている。近い将来、公的年金については、給付金の切り下げや支給開始年齢の引き上げが行われるだろう。しかし、だからといって、公的年金に代わる社会保障を民間で用意することは、現状では難しい。また会社員は給料から天引きされているので、「加入しない」とか「保険険料を払わない」という選択肢はない。「公的年金はアテにならない」と諦めるよりも、「足りない部分をどうまかなうか」について考えたほうがいいだろう。

2017年1月からは「個人型確定拠出年金(個人型DC)」の対象が拡大し、専業主婦や公務員などすべての人が加入できるようになった。公的年金の不足分を埋めるうえでは、有力な選択肢のひとつだといえる。

個人型DCでは、個人が掛け金を積み立て、運用次第で年金額が決まる。対象年齢は20~59歳で、原則60歳を超えるまで引き出すことができない。大きなメリットは税制面での優遇だ。個人型DCでは支払った掛け金の全額が所得控除の対象になる。課税所得500万円の会社員の場合、掛け金の年間上限である27万6000円を使うと年間約8万円の節税効果がある。一方、生命保険会社が扱う個人年金保険では、同じ27万円強を使っても節税額は約1万円にすぎない。

また通常の金融商品は運用益に税金がかかるが、個人型DCは非課税となっている。さらに積み立てた掛け金は一時金か年金のいずれかの方法で受け取ることになるが、それぞれ退職所得控除や公的年金等控除の対象になる。注意が必要なのは、「運用」の責任は個人が負うという点だ。個人型DCでは積み立てた資産をどう運用するかをそれぞれで選ばなければいけない。もちろん運用によっては損をすることもある。また、始めてしまえば、原則として60歳になるまでやめられず、引き出せない。気軽に始めてすぐやめられるものではないので、納得いくまで調べてから取り組んでほしい。

資産運用では、必ずしも金融商品を買わなくてもいい。現金での貯蓄も立派な資産運用のひとつだ。世間には「老後の不安」をあおる広告がたくさんある。焦りは禁物だ。特に最近、街中には「保険ショップ」が乱立している。私もいくつか相談を受けたが、その手口は強硬で悪質だ。不安に思ったら、金融機関に所属していない独立系のFPに相談してみてほしい。

内藤眞弓

ファイナンシャルプランナー。1956年生まれ。『医療保険は入ってはいけない!』『お金はこうして殖やしなさい』など著書多数。
 
(大井明子=構成)
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