豊かな老後を迎えるための大前提は「必要なお金」の把握だ。

よく老後には「1億円が必要」といわれる。国の「家計調査」によると「高齢夫婦無職世帯」の生活費は月額約27万円、単身世帯では約19万円だ。夫が60歳定年を迎えて以後の生活期間は、平均余命から考えると夫婦2人の期間が約23年、妻1人が約8年で、合計31年。この期間の基本生活費は9276万円。旅行や葬儀、入院などの費用を加えれば約1億円だ。

必要な貯蓄額は、年金の受給額でも変わる。夫が会社員で厚生年金を受給できる場合は月額22.6万円、自営業世帯では月額12.8万円が現在の水準。今後、支給額の目減りが予想される。年金だけでは5000万円以上の不足も覚悟すべきだ。

医療や介護の状況も厳しい。財務省の推計では社会保障給付費の増大はGDPの伸びを上回る。すでに医療費の自己負担額を抑える「高額療養費制度」の上限額は、年を追うごとに上がっている。こうした負担増は、これから次々と増えていく。どう備えるべきか。傾向と対策をみていこう。

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