「必ず何かを持ち帰る」という心意気
「出会う人の誰もが、自分の知らない何かを知っている」「誰でも何かの専門家」とヘッドリー氏。必ず誰でも得意な分野や、その人ならではの面白い話があるものだ。話を聞くときのコツは「自分を脇におくこと」だと心得ておきたい。
ところが、人は1分間に500語程聴くことができるのに、話せるのは1分間に225語程度(※)。この余力を埋めるために、聞いているうちに話したくなってしまうとの説もある。せっかくの知識に学び情報を得るうちに、結果として会話は盛り上がり相手も気持ちよく話せることを心しておこう。
◇聞くためのコツ
1.耳を傾ける
「『口が開いている時は何も学ばない』とは釈迦の言葉」。話しているときには自分に主導権があり、自分の興味がない話を聴く必要がない上に、注目の的になれる。だが逆に、人の話を聞き続けるには努力とエネルギーが必要になる。それでも“人の話を聞くことは自分のためになる”と思えば、努力も惜しまずにいられるだろう。
2.“ながら”をしない
スマホをいじりながら、視線をどこかに向けながら……では、そこにいながらにして、心ここにあらず。その瞬間その場所にいて会話にきちんと参加して、話に耳を傾けること。さもなければ、その場を離れてしまったほうがいい。
3.自由回答の質問をする
「きれいだった?」と聞けば「きれいだった」と単純な答えが返ってきてしまう。具体的に「どんな風だった?」「どう思った?」聞くことで、人は一度立ち止まって考えて、自分の思考を整理する。たとえば昔習った5W1Hの質問など、相手がイエス・ノーやおうむ返しで返事ができない質問を投げかけると、その人らしい考えなどが聞きだせる。
4.話の流れにまかせる
話を聞いている最中に、どうしても聞きたくなった内容にむりやり話を移したり、思いついたことをいつ話そうかと考えがめぐったりして、話を聞くことがおろそかになることがある。話の流れの中で質問をして会話を成立させることで、話に集中できるようになるはずだ。
5.相手の体験を自分のものと同一視しない
体験は個人のもの。話を聞いて「私も同じ経験があって……」と自分の話にすりかえることなく、相手の話に耳を傾ける。同じような体験だといっても、それぞれの体験は異なるものだ。
「出かけて人と話し、耳を傾けること。何より大切なのは、“感心させられるのを期待すること”です」 とヘッドリー氏は話す。お互いの時間を生かして、互いに得るものがあるような会話を成立させるには、自分が聞く立場でありながら主導権を握る、そんなことがコツとなる。お互いの理解と心地よさの中でコミュニケーションは潤滑になるものだ。
※英語のワード数。日本語では、スピーチ原稿1分の目安が300文字程度とされる。
[脚注・参考資料]
Celeste Headlee,10 ways to have a better conversation, TED May 2015
ジェシー・S. ニーレンバーグ 著 小川敏子訳 『「話し方」の心理学―必ず相手を聞く気にさせるテクニック』2005 日経新聞社