多くの情報を浴びないことに加えて、情報を捨てることも、新しい発想を生む環境づくりには欠かせない。

「寝る前に必ずメールのInboxを空にしないと気が済まない。あとで必要なものは残すけど、返信したら、95%はすぐに削除します」

増やさない、残さないが鉄則。メモもできるだけしないようにし、すぐに捨てるという。

「ここ4、5年、ノートやペンを持ったことがありません。使うとすれば携帯のメモ機能ですが、社員の給料の話など忘れると本当に困ることだけ。メールと一緒で、メモも不要になったらすぐに削除する。残しておくのは、どんなに長くても1カ月までです」

日頃は徹底して情報を遮断するが、アイデアの裏付けにはマスメディアの情報を利用するという。情報は、集めるタイミングと使い方も重要だと並木氏は指摘する。

「オリジナルのアイデアが固まったら、公の情報を積極的に集めにいきます。過去5年間の関連記事を全部読んだりもします。ただし、情報の広さを求めるのではなくて、内容を深め、発言の説得力を高めるため。情報は、アイデアを生むためではなくて、証明するために使うものです」

余計な情報は、百害あって一利なし。オリジナルのアイデアを自分で考え、それを補うように最小化された情報を駆使する。これが結果を出す並木流の情報との付き合い方だ。

▼並木式情報整理術「3カ条」

1. メールは95%削除
受け取ったメールはその日のうちに必ず返信し、保存するべき情報だけを残し、毎晩受信ボックスは空の状態にする。夜に会食をして、日付が変わっても返信するのが流儀。余計な情報は新しいアイデアを考える妨げになる。
2. メモの賞味期限は1カ月
マッキンゼー時代は打ち合わせの前後に多くのメモを作成したが、現在は後で必要になると思った金額などの数字や気になったフレーズのみを簡潔にスマホのメモ機能に保存する。1カ月以内には使用し、削除していく。
3. ニュースは見出しのみ
新聞やネットニュースなどをすみずみまで見ることはない。ニュースは見出しのみを見て、中身は見ない。マスメディアの情報はだれでも知ることができ、2次的アイデアしか生み出さない。

(大崎えりや=撮影)
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