敵は不動産オーナーの先入観
こうして生まれたのが、「保証金半額くん」だ。同社が、入居企業の財務状況を審査し、不動産オーナーに対して、保証金の半分(減額分)を保証する。入居企業側は、保証金の半額を不動産オーナーに預け入れ、減額分の5~10%を同社に手数料として支払うという仕組みだ。
入居企業側は、事業資金に回すことができる手持ちの現金が確保できる。不動産オーナー側は、入居企業の審査をアウトソースできるほか、保証金が半額になるので他のビルとの差別化ができ、空室の解消につなげられる。このサービスを開始して5年になるが、これまでに約200件の利用があり、対象のオフィスビルも、以前は10~30坪程度の中小ビルが中心だったが、最近は50~300坪の大型案件が増えているという。
しかし、ここまで事業を拡大するのは、簡単なことではなかった。特に不動産オーナー側の価値観を変えるのは大変だったという。「『減額を求めるのは、保証金が"払えない"からではないか』『保証会社の保証を受けるのは、財務状況が悪いからではないか』という先入観がありました」と豊岡氏は語る。不動産オーナー側には、財務諸表を分析するノウハウがないことが多い上、最近オフィス需要が伸びているIT系ベンチャーに対しても「社長がジーパンをはいているような会社は胡散臭い」「歴史が浅い会社は信用できない」と、不信の目を向けることが多かったという。そこを、「保証金が払えないわけではなく、成長著しいため事業拡大の資金に回したいだけ」と説明し、「財務状況は我々がしっかり審査している」と審査内容を丁寧に解説。少しずつ実績を積んでいった。