オフィス市場の変化にも対応
オフィス市場も大きく変化しており、かつてのように「ビルを建てれば埋まる」という時代ではなくなったことも大きい。「特に(2008年の)リーマンショック以降は、海外の投資家によるファンドなども参入するようになり、オフィスビルのプレイヤーが増えました。しかし、建物で差別化するのは難しいので、結局は身銭を切って、賃料を下げることになってしまいます」。
しかも、少子高齢化による生産人口の減少や勤務形態の多様化によりオフィスビルの需要が減っているにもかかわらず、今後もビル供給の勢いは止まらない。例えば、2016年4月に森ビルが発表したデータによると、1986年から2015年までの東京23区大規模オフィスビル総供給量は約3098万平方メートルであるのに対し、2016年から2020年までの総供給量は約572万平方メートルとさらに増える見込みだ。また、過去と比べて物件1件あたりの供給量が大きくなる傾向にあるという。「今後はますますテナントの争奪戦になるだろう」と豊岡氏は見ている。そんな中で、保証金が半額で済むというのは、金額が大きいだけに、テナントへのアピールポイントになる。
豊岡氏は、保証金を半額にする取り組みを、企業の成長支援の一つと位置付けている。特にITベンチャー企業の場合は、クラウドの普及もあり大きな設備投資は必要なく、優秀な人材確保が企業成長の最も重要な要素。人員増加に応じて、働く場として魅力的な場所にあるオフィスを借りることが死活問題になる。保証金が半額になれば、それだけ良い立地の広いオフィスが借りられ、浮いた資金を採用に回すこともできる。あるゲーム会社では、しっかりとした財務戦略を持っていたことに加え、30代半ばの社長が「資金はあるので保証金を全額払おうと思えば払えるが、保証金として眠らせるのではなく事業に回したい」という強い思いを持っていた。このため「保証金半額くん」を使ってオフィスを移転。2年後には資産が10倍になるまでの成長を遂げたという。
また、福岡県のあるパン屋は、このサービスを使って保証金を200万円から100万円に減額して店舗を移転。減額分は、パンの材料の粉代など、売り上げ増に直結するお金として使い、さらなる事業拡大に繋げた。「どの会社も、業種や企業規模は違っても、できるだけ生きたお金として使いたいという思いは同じ」と豊岡氏は話す。