今どきの詐欺師は「拝啓」より「前略」を使う
2013年の東京五輪開催決定から、オリンピックがらみの詐欺は多かったが、手口がバージョンアップしきている。
以前は、事前に地域限定で入場券を購入できるパンフレットやはがきを送っておいて、その後に「チケットを買いませんか?」という電話がかかってきて、購入を促す。また、「そのチケットを購入したい」という大手旅行会社を名乗る業者が電話をかけて、「チケットを買えば、高値(購入価格の3倍)で買い取りますよ」といってきた。
つまり、消費者自らの意思に任せた形で申し込ませて、入場券代を騙しとろうとする手口だった。この形だと、本人に思いつかせる形を取っているので、嘘の発覚を遅らせることができた。ただし、詐欺師にとっては、お金を騙し取るのに手間や時間がかかることがマイナスだった。
しかし今は、その前段階をすっ飛ばして、「あなたは、チケットを買っています」と言ってくる。この騙しの肝は、手紙でいえば、「拝啓」から、「前略」の手口にもってきている点だ。
「拝啓」であれば、時節の挨拶やご機嫌伺いを入れながら、丁寧な文面から入る。「暑さ厳しき候……」そして「いかがお過ごしでしょうか」などと続く。
それに対して、「前略」はそうした挨拶を省いて、要件から入る。まさに、この詐欺の手口も「入場券を買いませんか?」という最初の導入部分を割愛して、いきなり「あなたは、入場券を買っています」と要件から入ってくるのだ。
突然、要件を浴びせられると、電話を受けた側は、一気に相手のペースに乗せられてしまう。そして、多くの人は、考える間を与えられずに、次々に偽警察や弁護士などの語る話に聞き耳をもってしまうことになる。