ジャストインタイムと無借金経営
トヨタはリーマンショックの影響で、09年3月期に赤字に転落した。以後、経営の立て直しを図り、14年3月期になってようやく、リーマンショック以前の08年3月期の水準まで回復。15年3月期と16年3月期は、リーマンショック以前を上回るようになった、というのが昨今の経緯である。同時に納税金額も1兆円弱の水準まで回復させている。
原価率も90%を超す年度があったが、グループ全体でのコスト低減への取り組みもあり、およそ10ポイント減を実現。そのため、製造業としては合格水準とされる営業利益率10%をキープするまでになっている。
車両販売台数と販売金額で計算すると、1台当たりの販売価格は、09年3月期は206万円だったが、16年3月期は256万円と、50万円ほどアップさせてもいる。
トヨタの代名詞である、ジャストインタイムと無借金経営についても見てみよう。年度末の原材料や半製品などの計上金額と売上高から計算すると、トヨタは26日程度で工場にある原材料などを使い切っていることになる。同じ計算をするとホンダや日産は30日を上回っており、トヨタのジャストインタイムは、評判通りに機能しているといっていいだろう。
トヨタの無借金経営は、半分が本当であり、半分は誤りであるといっていいだろう。トヨタの単体ベースの借金(有利子負債)は3000億円である。単体売上規模11兆6000億円のわずか3%。事実上の無借金である。
トヨタは自動車事業を中核に、自動車販売を支える金融事業も手がけているが、自動車事業の有利子負債は1兆3000億円弱である。これまた、売上高27兆円の5%にも満たない水準だ。自動車事業も無借金に近いといっていいだろう。ただし、自動車ローンなどを手がける金融部門が17兆円を超す有利子負債を抱えていることで、トヨタ全体の有利子負債は18兆円を突破している。この面からすれば、トヨタの無借金経営は、誤りということになる。
トヨタの研究開発費は、年間1兆円前後での推移である。国内企業としては断然のトップだが、グーグルやマイクロソフト、フォルクスワーゲン、GMなどもトヨタに肩を並べるか、トヨタを上回る規模の研究開発費を投じている。新技術を巡る厳しい競争で、トヨタは先行できるのだろうか?