具体的な内容は何も決まっていない

10月12日、トヨタ自動車とスズキの提携に向けた記者会見が行われた。

トヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長は10月12日、共同会見を急遽開き、「両社の協力関係の構築に向けた検討を開始することを決めた」と発表。環境や安全、情報技術などの分野で連携を強化していくとした。

ただ、その具体的な提携内容について、両トップの口からは出てこなかった。「まだお見合いの段階」と豊田社長は話し、「具体的な内容の検討はこれからだ。まだ何も決まっていない。検討開始を皆さんにお知らせした段階だ」と協調した。

そもそも今回の提携に向けた検討は、鈴木会長のほうから持ち込まれた。「当社は国内は軽自動車、海外はインドを中心に事業展開しているが、伝統的な自動車技術を磨くのみでは将来は危うい。こうした悩みを今年9月に豊田章一郎名誉会長に聞いてもらい、トヨタの協力をいただけないかと思い切って相談した」と鈴木会長は説明する。

現在の自動車業界は、従来の自動車そのものの開発技術にとどまらず、自動運転などの次世代技術の開発が求められており、取り巻く環境がこれまでにない速さで大きく変化している。そんな中にあって、スズキの経営規模では、その開発投資には耐えられず、他社の技術協力がなければ生き残るのが難しい状況にあった。

しかも、鈴木会長は86歳と高齢で、今年初めには肺炎をこじらせて入院している。今回の共同会見でも、いつもの“修節”は影を潜め、元気がないように見えた。なんとか自分の目の黒いうちに将来への道筋をつけようと考えたのであろう。トヨタの支援を得られれば、これほど力強い存在はないわけだ。