学力が低いのは、朝食を食べないから? 貧困だから?
最後にもう一つ、朝食の摂取頻度と学力の関連です。
「朝食パワーで学力アップ!」。こんな標語を掲げたポスターをよく見かけます。そこで提示されているのは、朝食を食べる群と食べない群で、学力テストの成績分布がどう違うかという帯グラフです。
関連がとてもクリアーで「なるほど、朝食パワー恐るべし」という印象を持ちますが、私はちょっとばかり怪しいと思っています。私なら、以下のようなグラフにします。横幅の大小を使って、朝食を食べる群、どちらかといえば食べる群、食べない群の比重を表現した「モザイク図」です。
朝食を食べる児童ほど、算数B(算数の応用科目)の成績がよくなっています。朝食を食べるa群では、A(上位4分の1)が最も多し。対して朝食を食べないc群では、半分近くがD(下位4分の1)です。
しかし横幅をみると、朝食を食べないc群は量的にごくわずかです(全児童の4%ほど)。ここまで少数派であることは、子どもに朝食を食べさせるのもままならない貧困家庭の児童であると思われます。
家庭の経済力と学力の結びつきはよく知られていますが、図4の傾向は、家庭の富裕度を介した疑似相関ではないか、という疑いが持たれます。この疑念を晴らすには、家庭の経済力をそろえた比較をする必要があります。それでもなお、上図と同じような模様になるのなら、「朝食パワー」の効果をある程度支持してもよいでしょう。
モザイク図にすることで、比較対象の群が置かれた文脈を読み取ることができる。ある会社で、社員の仕事への満足度が男女でどう異なるかを分析するにしても、女性社員の割合を考慮しなければなりますまい。女性社員の満足度が低い場合、会社に女性が少ないという、集団の文脈の影響を被っている可能性もあるからです。こういう情報も視覚化しようという際、モザイク図は有用です。
紹介したいグラフがあと3つありますが、それは次回にしましょう。『ラーメン二郎』の経験率、保育タイプや夫婦の家事分担率の国際差を、一風変わったグラフで表現してみようと思います。お楽しみに。