自殺率 昭和30年代は20代が高かったが、今世紀は……

いつの間にか、本連載も18回目になりました。「データで社会を読み解く論稿」ということで、自由奔放に書かせていただいていますが、「たまには、読者のビジネスマンの参考になるようなネタを……」というのが編集部さんのホンネでしょう。

私はビジネスのノウハウなど微塵も知りませんが、データを効果的に表現するユニークなグラフ技法の紹介はどうかな、と考えました。現代は「エビデンス」の時代。企画立案の会議などでは、データを交えたプレゼンテーションが求められることが多いでしょう。

その時に力を発揮するのがグラフですが、このような見せ方のグラフ技法はどうか、という提案をしてみようと思います。私のエゴが入った作品ばかりで、皆さんの参考になるか分かりませんが、気軽に読んでいただければ幸いです。

まずは、自殺率のグラフです。

初っ端から物騒な話題ですが、社会病理学を専攻する私は、自殺率をきめ細かく観察しています。自殺率は時代によって違いますが、年齢によっても異なります。

「時代×年齢」でいうと、昔は若者の自殺率が高かったのですが、最近では高齢層で高くなっています。時代によって、自殺対策で重点を置くべき層も変わってくるわけです。

話が込み入ってきましたが、要するにどういうことか。図1は、「時代×年齢」の自殺率を等高線グラフで表現したものです。自殺率(10万人あたりの自殺者数)に応じて、該当箇所を塗り分けています。

自殺率10未満は青色、10台はオレンジ色、20台は灰色、30台は黄色、40台は紫色、50以上はブラックです。私は今40歳ですが、2015年の40代前半男性の自殺率は30.4なので、該当箇所は黄色になっています。

どうでしょう。どの時代のどの層がヤバかったのかが一目で分かります。ブラック(自殺率50以上)の分布をみると、1955(昭和30)年では、自殺率が最も高かったのは20代の若者でした。戦前と戦後の新旧の価値観が混在していた頃で、生きる指針を見出せず、自らを殺めた若者が多かったそうです。

相思相愛にもかかわらず、旧来の「イエ」の慣行に結婚を阻まれ、無理心中を図る男女も多かったそうな。これなども、時代の過渡期における若者の悲劇といえます。

高齢者の自殺率も高かったようですが、当時は年金などの社会保障はありませんでした。それでいて戦後の社会改革により、「老人の面倒は家族が見るべし」という価値観は廃れつつありましたから、生活苦による老人の自殺が頻発したと思われます。余談ですが、現在の韓国がこのような状況にあります。この国の高齢者の自殺率はメチャ高です。