第2の危険は、9.11型のようなハイジャックへの脆弱性である。これまでのルートでは、航空機が都心に向かえば明らかに着陸航路を外れることからハイジャックされたとわかり、東京湾や千葉上空であれば最悪の場合撃墜も可能だった。しかし、新航路の場合は都心がルートに含まれるため、ハイジャックされたかどうかがわかりにくい。一瞬で都庁や防衛省に突っ込むことも可能であり、地上は人口密集地であるために撃墜したところで大惨事になる。

しかし、国土交通省の危機感は非常に薄い。住民説明会での説明や公表資料では、「新ルートでテロのリスクが上昇することはありえないし、空港での検査をしっかりするから安全だ」と豪語している。仮にそうだとしても、国土交通省管轄外の海外の空港発便の場合はどうなのか。航空機爆破はハイジャックよりも容易である。さらに、海外の搭乗時の手荷物検査に穴があることは、昨年の靖国神社爆発音事件の容疑者が、二度にわたって韓国から日本に大量の黒色火薬を持ち込めたことからも明らかだ。彼が航空機爆破を企てていれば、実行することができたのだ。

そもそも、国土交通省の説明は嘘ばかりだ。彼らはニューヨークやロンドンの例を挙げて、首都上空を飛行するのは国際的に当たり前だと主張する。しかし、ワシントンDCのレーガン空港の飛行経路は安全なポトマック川上空経由が基本で、ダレス空港の着陸便すべて、離陸便もほとんどがワシントンを迂回している。また、ワシントンの中枢部は飛行禁止区域とされ、戦闘機や地対空ミサイルを含む何重もの防衛・監視網が布陣されており、丸裸の東京都心とは大違いなのである。

また、09年に都心上空案が検討された際、国土交通省は「安全上の理由」により最終的に撤回した。では、今回どのような「安全上の改善」があったのだろうか。国際情勢を見れば、ISが地域外でのテロ活動を強化し、アルカイダが勢力を盛り返し、日本人も多数犠牲になっているなど、むしろ悪化しつつあると言えるだろう。

解禁の目途としている東京五輪では、世界中の観光客が都内に集中する。世界の関心度を考えても格好のターゲットだろう。なぜ、そんな時期に開放するのか。これではテロ誘致活動でしかない。都心上空案は再考なり延期が妥当ではないだろうか。

(大橋昭一=図版作成)
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