部下の異動希望を握りつぶす上司
(4)「飼い殺し」上司
有能な部下を抱え込んで、使い倒すまで手放さない上司のことだ。ブラック企業ならぬ“ブラック上司”だが、このタイプの上司は多いと指摘するのはサービス業の人事部長だ。
「上司にとっては戦力となる兵隊が集まっていたほうが、自分にとっては楽だし、優秀な人材を囲い込みたがる人が多いのは事実。しかし、部下にとっては他の部門で活躍できる可能性があるのに、その芽をつぶしていることになる」
例えば、部下が自己申告書で毎年異動希望を出してもずっと無視する。社内公募に応募しても「君はこの部署を背負っていく人間だ」といった甘言を弄して封じてしまうことすらやってのける。
しかし、昇格することなく、本人も腐ってしまい、仕事に対する意欲も失ってしまう。
最近はこうした「飼い殺し」の風潮を是正するために、若手社員については人事が主導権を持って異動希望者を5年以内に異動させるようにする企業もある。
証券会社の人事部長は次のように語る。
「希望者は原則5年以内に異動することを内規で決めた。人事データを見て、長年、異動希望を出しているのに異動させてない上司に対して、その理由を書面で提出するように命じている。『まだ仕事が一人前ではない』といった理由を書いてくる上司には『あなたの育成能力が悪いのでは』と詰め寄り、異動させるようにしている」
社員はその部署では重宝な存在かもしれないが、会社にとっても貴重な人的資源だ。そんな社員を有効活用できていない会社はまだまだ多いのが実状だ。