「アメリカも韓国も、SSNのような『見える番号』そのものを、単独で本人確認の手段として使うことに問題があったと思います。個人番号とは別の暗証番号や電子証明書、写真による本人確認などを組み合わせれば、安全性は高まるのですが」と、近藤氏は言う。
とはいえ、これほどの「事件」が起きていても、番号制度そのものを廃止する動きはどこの国にも見られない。
「アメリカのSSNは、ローコストでその人の信用情報等が確認できる経済インフラになっていますし、他の国々も行政の効率化やコストダウンなど、多大なメリットを享受しています。それらをゼロに戻す方向には向かわないでしょう」(近藤氏)。
さて、こうした他国の制度と比べ、日本のマイナンバーはどうなのか。オーストリアと同様にデータを分散管理して名寄せの乱用を困難にしたり、電子証明書や写真を併用してなりすましを防いだりと、個人情報の保護という面では配慮がなされている。「各国のシステムやトラブルを研究したうえで、安全性に重点を置いた仕組みになっているとは思います」(同氏)。
一方で使い勝手の面では、民間利用の行方がはっきりしないなど、まだこれから。まずは安全優先の設計で国民の理解を求めつつ、導入を急いだということなのだろう。