日本より先に、マイナンバーと同様の番号制度を導入してきた欧米や韓国。国ごとの制度の特徴には、各国の歴史や国民性が反映されていると専門家はいう。先人はどんなメリットを手にし、一方でどんな問題が発生しているのか。

スウェーデンで生まれた赤ん坊は、名前より先に個人番号(PIN)を手に入れる。病院から税務署経由で出生の連絡を受けた同国の国税庁が、一人ひとりに10ケタの固有番号をつけるのだ。国税庁からの書類に、親が赤ん坊の名前を記入して返送すると、登録は完了する。

その後の一生を通じて、個人番号はスウェーデン人の生活必需品となる。児童手当など各種の給付金は番号ごとに自動的に支給されるし、就学・就職、各種の行政手続きや確定申告も、個人番号をベースに行われる。失業保険や育児休業保険の申請、将来の年金給付額の確認、病院の診療予約も、個人番号を使ってオンラインで行える。

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銀行口座やクレジットカードを作るときなど、民間企業も本人確認手段として個人番号を活用。顔写真がついたIC(集積回路)チップ内蔵の専用カードもあるが、手持ちのキャッシュカードや携帯電話に番号データを収納して持ち歩く国民も多い。

「番号がないと国民生活が成り立たないという意味では、世界でも指折りの事例だと思います」というのは、同国の番号制度に詳しい日本総合研究所の湯元健治副理事長だ。

一口に番号制度といっても、そのシステムや運用の形態は国ごとに異なる。

アメリカ、韓国、スウェーデン、エストニアなど多くの国では、ある国民に関するデータを、異なる行政機関が同一の番号で管理している(フラットモデル)。一方ドイツでは、行政機関ごとに異なる番号でデータを管理している(セパレートモデル)。

前者は効率や使い勝手、後者は個人情報の乱用防止に重点を置いた構成といえる。オーストリアはこれらの中間で、行政機関ごとに異なる番号でデータを管理しながら、1つの番号から暗号などを介して呼び出す「セクトラルモデル」を採用している。