冷房に頼る生活は体臭が発生しやすい
加齢臭の元となるノネナールとアンモニアが結びつくと、とたんにニオイが強くなる。これが疲労臭といわれるものだ。
「疲労臭は汗から出るものです。といっても健康な人のかく汗は無臭です。放っておくと雑菌が発生して汗臭いニオイを発しますが、濡れタオルで拭き取ってしまえば臭わない。ところが、かきたてからクサい汗が出る人が増えているのです。理由はいくつかあるのですが、1つは汗腺の問題。汗は血液からできています。汗腺が血液を汲み取って、ミネラルなどを再吸収して戻し、サラサラの水に近い液体になったものが汗です。だから臭わない。ところが再吸収する汗腺機能が弱くなると、アンモニアとか、乳酸などが汗に含まれてしまい、これが臭うのです」
なぜ汗腺機能が低下した人が増えたのだろう。
「1つは冷房の利いた生活に慣れてしまったこと。もう1つは運動不足。つまり汗をかかない生活をしているからです。使わない機能は退化しますが、汗腺機能は特に退化しやすい。だからネバネバした臭う汗をかく。そのなかのアンモニア臭の強いものが疲労臭と呼ばれています。アンモニアは食べ物のたんぱく質を分解したときと、急激な運動をして筋肉のたんぱく質が分解されたときに発生します。アンモニアは毒性が強いので、肝臓で尿素に変換して無毒化し、尿と一緒に出してしまうのですが、肝機能が弱っているときに動物性のタンパク質を摂りすぎると、アンモニアを含んだ汗となり、それが皮脂と混じり合うとニオイは一段とキツくなるのです。ストレスをためながら、せわしなく働くビジネスマンは疲労臭になりやすいですね」
一生懸命家族のために働いているのに、妻や娘からクサいと嫌われるなんて、ああ、なんという中高年男性の悲劇。ところが、クサくなるのは中高年男性だけではないそうだ。比較的若い30代くらいのビジネスマンに多いのがミドル脂臭といわれるニオイ。
「汗の中に混じった乳酸が分解されるとジアセチルというニオイ物質になるのですが、これが体臭のなかでも女性に一番嫌われるミドル脂臭です。特に頭や首、耳の後ろあたりから出やすいニオイです。これも最大の原因は生活習慣とストレスです」
仕事でストレスが生まれる→ニオイがキツくなる→ニオイに対する悩みが発生し、ストレスがさらに強くなる→その結果仕事に悪影響を及ぼす→クサいと指摘される→さらにストレスが強くなる……と負のスパイラルに陥ってしまうのだ。
「つまり体の不快なニオイは、健康が損なわれているサインだということです。ニオイ対策で一番重要なのは、なによりも健康な体をつくること。メタボにならない食生活や運動習慣を身に付け、ストレスを蓄積しないということですね」
クサいニオイは元から断たなきゃダメ、ということだ。