中国艦の“ロシア艦艇追尾”は「現場の判断」

尖閣諸島接続水域への中国軍艦の侵入後、外務省は午前2時に程永華駐日大使を呼びだして抗議。程大使は「(尖閣諸島の)主権は中国にあり問題ない」としつつも「エスカレートは望まない」と述べた。尖閣諸島周辺海域には中国公船(海警局)が遊弋して領海侵入をしばしば行うが、海軍艦艇は70~100km離れて位置するのが通常であった。日本の実効支配区域の接続水域に「領有主張」を行う中国軍艦が突然入り込むことは、挑発行為である。

しかし、日本の抗議に対して低姿勢になるような方程式を中国は持たない。15日午前3時30分頃、今度は中国海軍情報収集艦が口永良部島の領海に侵入。1時間半にわたって領海内を航行したあと、屋久島南の海域から領海外に出た。

この際、日本政府は係争地域でもないことから抗議しなかったが、中国軍艦による領海侵入は12年ぶり、2度目である。9日未明の件とあわせて中国海軍による我が国周辺での行動を懸念する旨、外務省から在東京中国大使館(劉少賓次席公使)に対して伝達された。

この間、周辺海域では10~17日の期間で日米印海上合同演習「マラバール」が実施されていた。中国情報収集艦が領海侵入した際は、近くに演習参加中のインド海軍艦艇(フリゲート艦2隻と補給艦)が行動中で、これを監視・追尾するような動きを示していたという。

筆者は、中国軍関係筋に尖閣でのフリゲート艦の動きについて意図を問うたところ、「現場の艦長の判断権限で『主権維持活動(尖閣接続水域での遊弋とひんぱんな領海侵入)』をロシア艦艇に対して行ったのだろう」との回答だった。2010年以来の中国公船による日常的な「主権維持活動」が、今後は「現場の判断」で海軍艦艇が尖閣諸島を含む我が国領海周辺をわがもの顔に行動しかねないということだ。

21世紀に入ってから、「領海法」などを制定し海洋権益追求に乗り出した中国。フィリピン、ベトナムなどと衝突しながら、南シナ海では占拠した岩礁を埋め立てて7つの人工島からなる拠点まで作ってしまった。昨年からは米国もこれを座視せず、「航行の自由作戦」と称して航空機、艦艇による中国側主張の「領海」「領空」への侵入も繰り返し、事態の固定化を阻止しようとしている。

日本もターゲットに入れた中国海軍の行動をとどめる道は、力にだけ頼ればかなり危ういものとなる可能性がある。硬軟両面での巧みな対峙が求められる。

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