私自身は、待機児童の解消が最も重要と考えている。しかし、仮に保育・教育・医療を無償化し、その全額を消費税増税で賄うと、約4%もの増税になる。そこで代わりに私が提案したい財源策は、第1に「相続税の拡大」、第2に「被扶養配偶者優遇制度の限定」である(図2)。

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図2 国の負担増分の財源は?

日本での相続遺産の年間総額は、最近の推計では、平均的に見積もったケースで約37兆円、最大に見積もったケースで約63兆円と推計されている。しかしながら、基礎控除が「3000万円+600万円×法定相続人数」と大きいこと等の要因があり、実際の相続税収は毎年1兆8000億円ほどにすぎない。

仮に相続遺産の年額を37兆~63兆円の中間の50兆円とした場合、現行の税制を改めて、例えば配偶者がいる場合の基礎控除を1000万円、子どもがいる場合の基礎控除を子ども1人あたり100万円に抑えたうえで、税率を仮に一律20%とすると(累進化は今後の課題)、6兆5000億円の税収増を見込める。

被扶養配偶者優遇制度には、所得税・住民税の配偶者控除・配偶者特別控除と国民年金・健康保険の被扶養配偶者保険料免除がある。仮にこれを全廃すれば、約3兆5000億円の税収増が見込める。ただ全廃すると貧困世帯の負担は増えてしまう。

そこで、世帯年収が上位30%の世帯(世帯年収約800万円以上)を優遇対象から外せば、それだけで約1兆1000億円の税収増が期待できる。また副次的に、女性の就労が促進されることも期待できる。

以上を合わせると7兆6000億円となり、待機児童解消と子育て費用無償化の財源をほぼ確保できる。

ただ増税への抵抗、制度変更による副作用のリスクを抑えるため、多様な財源を組み合わせる「小規模ミックス財源」がベターと考えられる。