77年、当時のポッカコーポレーション(現ポッカサッポロフード&ビバレッジ)は、国内飲料業界に先駆けて、海外生産拠点「ポッカコーポレーション・シンガポール」を設立した。15年現在、同国内の茶系飲料で45%、緑茶飲料に限定すれば65%のシェアを叩き出している。

「ポッカは大成功しました。前社長の平田正弘さんが頑張って、コカ・コーラのシェアを上回ったんです」

食品でトップシェアを取った日本企業はほかに前例がないという。

「平田さんが言うには、食べ物なのだからまずはとにかく美味しくないといけない。でも美味しい、美味しくないは、現地の人によって全部違うのだと」

ポッカが「甘いお茶」を出した理由

いかに日本の常識を捨て、現地の目線で製品づくりをするか。それこそが成功への最大の課題である。

「ポッカは甘いお茶を出したんです。日本人には違和感があるでしょ? でも、シンガポールでは今や、子供からお年寄りまでみんなに愛されている定番ドリンクなんです」

ほかにも、現地の感覚に謙虚に向き合って商品開発に挑み、快進撃を続けているサムライ・ブランドは、アジア中で枚挙にいとまがない。

マンダムの「ギャツビー」は、半歩先を行く“旬なカッコよさ”を追求する、日本でも人気の男性用整髪料ブランドだ。80年のインドネシア進出を皮切りに、現在ではシンガポール、マレーシアなどにも販路を拡大し、東南アジア諸国でのブランド認知率は80%を超えるという。

カシオの「インド式桁表示電卓」は、現地駐在社員のアイデアから生まれた。数字の桁区切りは「1,000」などの3桁区切りが世界標準だが、インドでは独特の桁区切り(最初だけ3桁であとは2桁ずつ)が広く浸透している。そこに着目し、インド式桁表示の電卓を世界で初めて開発、同国で好評を博している。

ほかにも、シャープではフィリピンで2層式洗濯機を13年から発売開始した。2層式といっても、日本でよく見る洗濯槽と脱水槽付きのあれではない。なんと両方の槽が洗濯の洗濯物に一気に対応できる大容量の洗濯槽が求められている。50軒以上の家庭を訪問し、100名超の一般ユーザーにヒアリングを実施した結論だ。同社の洗濯機はASEAN全体でもシェア1位を誇る。